台湾・故宮博物院が一新 特別展「大観」 北宋の「至宝」一堂に
2006年12月25日~2007年3月25日
世界有数の博物館である台湾の故宮博物院(台北市)が2年がかりの大改装を終え、25日からリニューアルの記念特別展「大観」が始まる。3月25日までの期間中、中国歴代王朝の文物を中心に約65万点に上る故宮所蔵品の中でも、特に充実し「至宝」と呼ばれる北宋時代の青磁や書画、図書を一堂に展示する。2月8日には全館リニューアルの開館記念式典を開催。見やすく快適に生まれ変わった故宮が誕生する。(台北・遠矢浩司)
1965年に現在地に建てられた故宮博物院は、何度か改修・拡張を繰り返してきたが、展示スペース拡大や施設刷新のため2004年春から全面改装を開始。先行した本館東側と玄関部分が今年5月にリニューアルオープンした後、本館西側の工事にかかり、一部を除いてほぼ完成した。
改装前に比べると、ロビーや廊下、休憩所、喫茶等の公共スペースが大幅に増加。展示エリアも広がったことで延べ床面積は約6千平方メートル増えて約2万4千平方メートルとなった。玄関部分には、吹き抜けや大きな窓を設けて自然光を取り入れ、明るくモダンな印象に変身している。
改装に伴い展示方法を収蔵品の分野別から時代別に改め、入館者にとっても分かりやすくなった。人気の「翠玉白菜」や「肉形石」は独立した展示台を設けたり、新たにコンピューターグラフィックス(CG)を使って説明したりと、見やすくする工夫もしている。
特別展の「大観」は、中国の文化芸術の一つの黄金期である北宋(960-1127)の芸術家皇帝として知られる徽宗(きそう)の年号から取ったもので、「北宋書画特別展」「北宋汝窯(じょよう)特別展」「宋版図書特別展」の三つで構成される。いずれも国宝級の書画76点、磁器45点、図書28部を展示する。
特に、北宋末期の20年間だけ御用窯だった汝窯は、完形品が世界に70個ほどしか現存していない最高級の青磁。故宮は、そのうちの21個を所蔵しており、今回、国外から借りた三個と合わせて展示する。
また、書画も山水画や花鳥画などが起こった宋代の傑作ぞろい。保存のために3年に一回、40日間しか公開されない作品も多い。故宮の担当者は「汝窯も書画も北宋の傑作をこれだけのスケールで展示できるのは、最初で最後かもしれない」と話している。
一方、2月8日のリニューアル記念式典の前後に「故宮戸外芸術蔡」や学術検討会を開催。同月3、4日には観世流能楽師、梅若六郎さんの能の公演も予定されている。
■ 美しい青色の汝窯 傑作ぞろいの書画 特別展見どころ
「汝窯」と「書画」両特別展の見どころを二人の研究員に聞いた。
〈汝窯〉
余佩瑾研究員 汝窯は、現在の中国・河南省にあった御用窯の青磁。その特徴は「雨過天晴」(雨上がりのスカイブルー)といわれる美しい青色だ。多くの宮廷人や文人が愛好してきた。今回、大阪市立東洋陶磁美術館や中国、英国からも完形品や破片、比較対象となる高麗青磁なども借りて、体系的に見ることができる。世界でもこれまで汝窯20点以上が一堂にそろった展示会はなかった。
〈書画〉
何傳馨研究員 北宋の書画は傑作ぞろい。范寛の「谿山行旅圖」郭熙の「早春圖」、李唐の「萬壑松風圖」の三つの山水画はとても重要だ。他にも良い絵が多い。書では蘇東坡ら宋の四大書家の作品を推薦する。
76点のうち五点はメトロポリタンなど米国の美術館から借りた。保存が難しい約20点は期間中、前半(2月7日まで)と後半(同8日以降)に分けて展示する。これだけの数は今回しか見る機会がないと思う。
■ 明るく楽しめる博物館に 林 曼麗・故宮院長に聞く
-新しい故宮は、どう変わったのか。
明るくなって公共空間が広々となった。ショップやカフェもよりよいサービスを提供していく。見学コースも分かり易くなったと思う。これまでガイドが大きな声で説明して館内がざわざわする原因だった団体客には、新しく導入する無線ガイド機を利用してもらう。来館者に静かで良い雰囲気の中、作品を見てもらうようにしたい。
-就任以降、「新しい時代の博物館像」を目指しているが。
博物館は作品を保存・展示するだけでなく、来る人が楽しめる場所であるべきだと考える。そのためにさまざまな芸術活動を行う。2月には大英博物館展や日本の能の上演もするし、各国の映画監督との共同制作も企画中だ。現代性を持った新しい文化、芸術を作り出す活動をしていく。
-外国の博物館、美術館との協力は。
もちろん進めていく。今回の特別展では、ニューヨークのメトロポリタン美術館などの協力を得ているし2008年にはオーストリアで故宮展を開く予定だ。日本での展示は(国交がなく)政治的な問題の解決が必要で、すぐには出来ないが、学術交流などを推進したい。2月のリニューアル式典には九州国立博物館の館長も招待している。
-「大観」のセールスポイントは。
故宮の所蔵品の中で、特に北宋のものは質、量とも優れている。世界でもこんな企画展が出来るのは故宮ぐらいしかない。前にも後にもない展覧会になるので、すべてを見てほしい。日本からのお客さんを、たいへん重視している。今回、日本語のガイドを特別に準備しているし、音声ガイド機にも大観の日本語説明を入れた。ぜひ来てください。
▼林曼麗(りん・まんれい)院長 1954年生まれ。東京大学で美術教育の博士号を取得し日本語も堪能。台北市立美術館館長、故宮の副院長などを歴任し、2006年1月、初の女性院長に就任。 |