西日本新聞

2008年05月02日掲載記事より

JR日田彦山線 筑前岩屋駅 (福岡県東峰村)

わき水求めて人々が集う
関連写真と以下、写真説明 釈迦岳トンネルを抜け、筑前岩屋駅に到着する列車
関連写真と以下、写真説明 駅舎近くの水くみ場には連日、多くの人たちが訪れる

 棚田に囲まれた線路の脇で、遅咲きの菜の花が風に揺れる。その向こうに、ぽっかりと口を開けたトンネル。暗闇に光る2つのライトがみるみる大きくなると、ディーゼル列車が姿を現し、JR筑前岩屋駅のホームに滑り込んだ。

 福岡県東峰村と同県添田町にまたがる釈迦岳(しゃかだけ)トンネルは、全長4378メートル。1956年の開通当初は九州一の長さを誇った。

 37年に着工したトンネルは、戦時中に工事を中断するなどして、完成までに19年もの歳月を要した。53年には工事中に落盤事故が発生し、29人が犠牲となった。駅舎そばの小高い丘の上には、亡くなった全員の名前が記された慰霊碑が立っている。

 悲劇を招いたトンネル工事だが、思わぬ副産物をもたらした。日量約1万5000トンのわき水。岩盤でろ過された弱アルカリ性の水は、やわらかな口当たりが特徴だ。

 筑前岩屋駅の1日の乗降客はわずか30人ほどだが、旧宝珠山村(現東峰村)が駅舎近くに整備した水くみ場には連日、ポリタンクやペットボトルを手に、トンネルから引かれたわき水を求めて多くの人たちが各地から集まる。同県飯塚市から訪れた吉松光明さん(78)は「ここの水は不純物がなく、すーっと体に入っていく。4、5年前から1週間ごとに来ている」と水をくんでいた。

 東峰村では、わき水を地域おこしにつなげる動きも出ている。村主催の各種ウオーキング行事は、筑前岩屋駅が出発点。参加者は水をくみ、山歩きなどを楽しむ。豊かな自然とトンネルが生みだした水は、高齢化と過疎化に悩む山村に活性化のヒントも与えている。

 (朝倉支局・吉田修平)


 1956年3月に開業。97年に建て替えられた駅舎は、木材をたくさん使った山小屋風の建物で、脇の水路ではコイがゆったりと泳ぐ。小倉駅(北九州市)から1250円、日田駅(大分県日田市)からは450円。上りの始発は午前6時3分、最終は午後9時18分で、ともに田川後藤寺行き。下りの始発は午前6時38分の大分行き、最終は午後9時3分の日田行き。1日に10往復運行している。


おすすめスポット

こもで覆われた「宝珠石」
関連写真と以下説明 「宝珠石」を神体として祭っている岩屋神社の本殿

 岩屋神社は、筑前岩屋駅から車で約5分。旧福岡藩四代目藩主の黒田綱政が1698年に建立した。国重要文化財で、2006年に修復工事を終えた。  本殿には、旧宝珠山村の名前の由来となった神体の「宝珠石(星の玉)」が祭られている。石はこもで覆われ、「中身を見た者は目が見えなくなる」と伝えられる。うるう年の10月19日に「薦(こも)替えの儀」がある。毎年5月3、4日には、あばれみこしが繰り出し、護摩供養などがある「岩屋まつり」が開かれる。


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