2003年06月25日更新
石畳の坂が続く湯平温泉街
観光客でごった返す町なかから車で二十五分。「えっ、ここも同じ町?」と意外に思えるほど、湯平(ゆのひら)温泉は静かなたたずまいを残していた。
大分県湯布院町の南部にある湯平温泉を訪ねた日はあいにくの雨だった。山に囲まれた温泉街の脇を流れる花合野川の水音もひときわ高く感じる。
案内してくれたのは、同温泉観光協会副会長の金子裕次さん。温泉街の真ん中を通る石畳の坂を、ゆっくり登った。約三百年前の江戸時代につくられた幅三メートルほどの道の両側に旅館が並ぶ。
「江戸時代には、この坂を山から切り出した木材を積んだ荷馬車が下りました。勢い余って建物に突っ込んだりもしたそうです」
旅館は三十一軒。ほとんどが七、八部屋の小規模な宿で、食事も女将らによる手作りのところがほとんどだ。
同温泉がある湯平村と由布院町とが合併して湯布院町が誕生したのは一九五五年。湯平温泉には当時、六十軒ほどの旅館が集まり湯治客らでにぎわいをみせていた。逆に現在観光客が多い由布院側には十軒ほどしかなかったという。
通りの中ほどに、若手の旅館経営者ら十数人で営業しているというバーがあった。メンバーが毎夜交代でマスター役を務めている店だ。「空き家となった店を利用したものです」と金子さん。同温泉街の悩みの一つが後継者不足。「旅館はピーク時の半分。町のにぎわいを消すまいと、若手ががんばっているんです」と解説してくれた。
坂の上にある志美津旅館に寄った。経営者の清水聡二さん(42)は「川音を聞きながらのんびり過ごす。温泉街の趣は昔以上ですよ」。金子さんも「日本人にとってのリゾートは、本来こんな所をいうんじゃないんですか」と語気を強めた。
同温泉は胃腸病に効果があるとして、お湯を持ち帰る人も多い。川音が響く道の脇に飲用専用の源泉があった。飲んでみると、海辺でもないのに、なぜか少し塩辛かった。
(白石克明)

湯平温泉までは大分自動車道の湯布院ICから車で約20分、JR湯平駅からは約10分。8月には、石畳の坂に長さ約300メートルにわたって竹のといを継いだ「大そうめん流し大会」が行われる。例年8月の最終日曜日だが、今年は第1日曜日(3日)に計画中。確認は湯平温泉観光案内所=0977(86)2367。