2003年10月01日更新
西海に向かってそびえ立つ野首天主堂
博多港から深夜のフェリーで約五時間。長崎県五島列島の北部に浮かぶ小値賀島、宇久島は都会に住む人にとって、身近な別世界だ。エメラルドグリーンの海で、釣りやマリンスポーツが楽しめる。潮風に吹かれながら野山を散策するのもいい。そして、何よりうれしいのは新鮮な海の幸の数々。島の魅力を全身で味わった。
まずは、五島列島最北端の宇久島。八百余年前、平家の落人が上陸して拠点を置き、五島一円を支配したという伝説がある島だ。中でも城ケ岳の展望台はお勧め。西海に浮かぶ島々や、生月、平戸などが一望できる。
空気がおいしい。潮風が心地よい。イサキ、ウニ、アワビ…。その夜食べた海の幸もとびきり新鮮でおいしかった。
次に向かったのは小値賀島。海底火山の噴火でできた島で、切り立った岩と鮮やかな緑が印象的だ。溶岩が波の力で削られ直径五十センチの「玉石」になった国指定天然記念物「ポットホール」など、見どころは多い。
小値賀島から町営渡船で渡る孤島・野崎島も魅力的だ。五百頭もいる野生のシカを横目に、四時間の山歩き。「どうせ小島の山だから…」と高をくくっていたが、これがかなりきつい。高みから見下ろす青い海が一服の清涼剤だ。
島歩きの末に着いたのは、一九〇八年に建てられたレンガ造り、ゴシック様式の教会、野首天主堂。内部は荘厳な雰囲気。花模様のステンドグラスが木の床に赤、青、黄色の柔らかな光を落としている。十九世紀初め、弾圧を逃れて移住したキリシタンの子孫たちがここで熱心に祈りをささげたというが、戦後、集落の全員が離島。神父もいなくなった。現在は年に一度、春に音楽祭が開かれ、教会は優しい音楽に包まれる。
夕刻、船に揺られて小値賀島に戻った。その晩、民宿でサザエのつぼ焼きを食べた。心地よく疲れた体にビールが染み渡る。満天の星にも酔った一夜だった。
(橋本裕充)

野母商船のフェリー「太古」が博多―福江間を1日1往復。途中、宇久、小値賀両島を経由する。運賃は博多―宇久間が大人4160円、博多―小値賀間は4330円。なお、野崎島へは小値賀島から定期船が出ている。1日2往復。所要時間は約20分。野母商船福岡支社=092(281)0237。