2004年10月13日更新
白壁が美しい飫肥城の大手門
バスの窓から外を眺めていると、急に景色が変わった。白壁に瓦屋根、そして武家屋敷の長い石垣…。まるで数百年前にタイムスリップしたかのようだ。NHKの連続テレビ小説「わかば」の舞台にもなっている宮崎県日南市飫肥(おび)は、豊かな自然と歴史に彩られた城下町だ。
城下町らしく、城の近くに、観光客向けに「四半的(しはんまと)」体験の試射場がある。四半的は、戦国時代に伊東氏と島津氏が飫肥の覇権を争っていたとき、伊東方の農民が手製の弓矢で加勢したのが由来とされる弓術だ。弓矢の長さは四尺半(一・三七メートル)で、的の大きさ四寸半(一三・六センチ)。それで四半的と呼ぶ。
両ひざをつき、下半身を固定する。合戦さなかの農民の姿を思い浮かべながら、約八メートル先の的をめがけ、思いきり弓を引く。が、矢は的の手前で失速してしまう。六本のうち的に届いたのは一本だけ。何事も道を究めるのは難しい。
「わかば」では、主人公の若葉が思い悩む度、必ず訪れる杉林がある。その杉林は、飫肥城の大手門をくぐり、長い石段を上っていくと、程なく見えてくる。高々とそびえる杉の木の木漏れ日が差す辺りに立つと、木々の葉を揺らす風とともに、木の香がほのかに漂い、不思議と落ち着いた気持ちになる。
ホッとするとおなかがすく。三百年の伝統を誇る卵焼きがあるというので、その名店を訪ねた。「厚焼」の大きな看板を構えた間瀬田厚焼本家は一六八九年の創業だという。参勤交代の殿様の道中の無事を祈って献上したという厚焼き卵は、日本酒と砂糖を加えて上下両面から焼き上げる。その表面のつやはまるでプリンのよう。一口食べると、ほんのり甘く、濃厚な卵の味が口の中に広がった。
ふと外を見た。夕暮れが迫っていた。タイムスリップ体験を堪能し、殿様になったつもりで、手にした厚焼き卵をほおばった。
(地域報道センター・甲斐田清史)

宮崎県日南市飫肥へは、宮崎空港から車で約1時間半。空港からJRならば1―2時間で飫肥駅。バスは飫肥城バス停下車。今月16日と17日の2日間、飫肥地区一帯で「飫肥城下まつり」があり、四半的大会などの催しがある。日南市商工観光課=0987(31)1134。