2005年12月09日更新
荘厳な舞で魅了する「高千穂の夜神楽」
自然の雄大さに圧倒される高千穂峡。左は真名井の滝
ドンドコドンドコ…。空気が澄みきった冬の夜、山あいの集落に太鼓の音が響く。時に激しく、時にゆっくりと。その音色の在りかを目指して「神楽宿」と呼ばれる民家にたどり着いた。雨戸や障子を開け放った屋内に設けられた舞台「神庭(こうにわ)」には、神面を付けて力強く舞う「ほしゃ(奉仕者)」の姿があった。
ここは九州のほぼ真ん中に位置する宮崎県高千穂町。夜を徹しての舞が繰り広げられる国の重要無形民俗文化財「高千穂の夜神楽」を見に訪れた。
天照大神(あまてらすおおみかみ)が隠れた天岩戸の前で、天鈿女命(あまのうずめのみこと)が面白おかしく舞う。こうした天孫降臨のエピソードをもとに、里に降りてきた神々と戯れ、五穀豊穣(ほうじよう)を感謝する「神遊び」として伝承されている。
神楽宿は、毛布やコートをひざにかけたり、ストーブで暖を取ったりして見物する百人ほどでいっぱいになっていた。聞くと、午後五時から神儀が始まり、翌日の午前九時まで全三十三番の舞を奉納するという。
その一つの「八つ鉢」は、まるでブレイクダンス。逆さになったり、太鼓に乗ったりして軽快に踊る。夫婦で酒造りをして仲の良さを描く「御神体」では、ほしゃが浮気相手を探しに客席に飛び込んでくるユニークな神楽だ。夜も明けようとするころ、次第に神楽宿のボルテージは上がる。天岩戸から天照大神が登場する場面を七つの舞を通して壮大に展開していく…。
同町社会教育課文化財係の緒方俊輔さんは「同じ夜神楽でも、集落によって演出や舞い順はさまざま。神楽の“はしご”をすると、集落ごとの特徴が楽しめます」と薦める。
夜神楽を堪能した後は十分に休憩を取り、高千穂峡や天岩戸神社を訪ねた。高千穂峡は九月の台風被害で遊歩道の柵の一部が仮設されているが、そそり立つ絶壁や真名井の滝はやはり絶景だ。貸しボートで下から見上げることもできる。
天岩戸神社奥にある天安河原は昼でも薄暗く、荘厳な雰囲気が漂ってくる。天照大神が隠れ、天鈿女命が踊った舞台とされる。目を閉じて、神々のダンスに思いをはせた。
(写真グループ・大丸剛史)


TR高千穂鉄道が台風災害で不通のため、バスか自家用車で。夜神楽は土曜を中心に来年2月まで開催される。初穂料として焼酎2本か3000円を包んで持参するのがマナー。問い合わせは同町観光協会=0982(73)1213=へ。