2007年06月15日更新
葉さんの絵本美術館前の広々とした高原。子どもたちに笑顔
山中の一本道でバスの車窓からの眺め。太陽の光に山肌の緑がきらめく
やっぱり阿蘇は素晴らしい。三重県の高校に通っていた17歳のときに修学旅行で訪れて以来、10年ぶりに再訪する機会を得た。当時の淡い記憶も抱えて、旅立った。
バスが山里の熊本県南阿蘇村に入ると、車窓から世界最大級のカルデラ火山の輪郭が見えてきた。雲の切れ間から降り注ぐ太陽の光が山肌の緑に照り返し、美しい。
10年前は雨だった。大地は薄暗く、放牧された牛たちの表情もどこか寂しげな印象だったが、この日は晴れ。バスは草原の一本道を気持ち良く走り抜けた。
「最近の南阿蘇はひと味違うんですよ」。ガイドさんの案内で、山の中腹にある葉祥明阿蘇高原絵本美術館を訪ねると、住民たちでつくる「南阿蘇えほんのくに」が手作りの絵本コンクールの表彰式を開いていた。
葉さんは同県出身の絵本作家。住民たちは、雄大な景観を「絵本のような世界」ととらえ、同美術館などで絵本作り教室や読み聞かせなど多彩なイベントを開催。子どもたちの感性を育てるとともに、阿蘇の素晴らしさを広く発信している。
「訪れれば大人も童心に戻れるような阿蘇にしたい。提供するのはモノではなく安らぎです」と、えほんのくに代表の宮本孝志さん。「ここにいると、優しい気持ちになれるでしょう」
美術館の周囲は、見渡す限りの大草原。涼しい風が吹き抜け、子どもたちが無邪気に駆け回っていた。息を深く吸い込むと、日々の疲れがすうっと抜けていくのが分かる。なるほど、気が付けば、絵本の世界に入り込んでしまったかのようだ。
10年前と比べた阿蘇での個人的発見は、豊かな自然に勝るとも劣らない地域を支える人々の魅力だった。
今度は自分の車で高原の隅々まで巡ろう。そのときは恋人も誘って。阿蘇は、また異なる表情で私を歓迎してくれるに違いない。
(社会部・森井徹)


葉祥明阿蘇高原絵本美術館は入館料大人400円、中高生200円、小学生100円。開館時間は午前10時─午後5時。年中無休。「南阿蘇えほんのくに」のイベントについての問い合わせは事務局=0967(62)0123。