2002年12月11日更新
菊池市を見渡せる丘の上に立つ菊池神社。愛子も節子も菊池一族の流れを引く
四季折々に美しい姿を見せる菊池渓谷や、南北朝時代に勇名をはせた「菊池一族」ゆかりの地として知られる熊本県菊池市。何でも「おしどり夫婦の里」として観光キャンペーンを進めているとか。まだ三十歳前の独身男だが、何事も予習するのは悪くない。同市のお薦めルートを歩いた。
市商工観光課アドバイザーの津留今朝寿さん(58)によると、キャンペーンの主人公は菊池一族の血を引き、同市中心部隈府(わいふ)で生まれた、明治の文豪徳富蘆花の妻愛子(一八七四―一九四七)。
二人は銀婚式の記念に世界一周旅行をするなど、おしどり夫婦として知られることから、隈府と妻の英訳「ワイフ」の語呂合わせで「ワイフ物語」を企画。「美肌の湯」と評判の菊池温泉の魅力も再アピールし、女性客や家族連れを呼び込もうという試みだ。
まず訪ねたのは、菊池夢美術館。来年三月末まで、愛子の生涯と、菊池一族の子孫でフランス人画家バルテュス・クロソウスキー(故人)の妻ド・ローラ・セツコ(節子)さん(63)を紹介した「愛子と節子の物語」展(無料)を開催中。
徳富夫妻と親交があったロシアの作家トルストイの手紙の写しなど約三十点を展示。世界旅行のルートを示したパネルには、現在のイスラエルで詠んだ「姉妹むつみし ひたにかたらば 闘う子等(ら)は あらじあらせじ」の歌が。母親の愛があれば戦いは起こらないという愛子の訴えは、今の時代にも通じる。
館内で節子さんの水彩画「シャクヤクとゆりの花」を眺めていると、「もっといい物がありますよ」と津留さん。美術館から徒歩十分で菊池神社に到着。境内の歴史資料館に入ると、そこには全く同じ絵が。実はこちらが本物で、節子さんが一九八四年に同神社に寄贈したのだという。
やさしいタッチの絵は、よろいやカブトなど勇壮な展示の中で輝く一輪の花。この男女の絶妙なバランスこそ「おしどり夫婦」の極意の一つか。
(糸山信)

福岡方面からは九州自動車道菊水インターを降り車で約40分。熊本市からバスで約50分。宿泊は、奧菊池温泉「月華亭」=0968(27)1515=など市内約30軒の温泉旅館で。来年3月末までの毎日曜午前10時から約90分、地元ガイドと町中を歩くツアーも開催中。500円。菊池観光協会=0968(25)0513。