2003年02月26日更新
作業中の酒造場を見学。手前の箱にあるのは板状の粕。あぶって食すと美味という
九州の酒どころ、福岡県筑後地区では今、各地の蔵元が自慢の新酒を蔵開き行事などでお披露目中。旧知の飲み仲間から「今年も良い酒ができとるよ」とお誘いがかかり、ふらりと筑後路へと足を向けた。
筑後地区は、大河・筑後川の下流域に位置し、良質で豊富な水、広大で肥沃(ひよく)な平野がはぐくむ原料米に恵まれ、古くから酒造りが盛んな土地だ。今回訪ねたのは、その筑後川に程近い、同県城島町青木島の筑紫の誉酒造。一八九七(明治三〇)年の創業で、敷地内には風格漂う酒造場が鎮座する。
四代目社長、鷲頭勇人さん(49)の案内で内部を見学。酒造りにまつわる説明のあれこれに耳を傾ける。が、こちらのお目当ては試飲。目の前で、しぼり出されたばかりの原酒を一口いただく。辛みがあり、野趣あふれる印象。杜氏さんの仕事場をお邪魔した非礼をわびつつ、その仕事に敬意を表し、もう一杯。飲んべえの勝手な理屈である。
同酒造はこの時期、自宅の座敷を開放し、酒蔵料理を振る舞ってくれる。酒米が発酵する際に生じる泡で作ったまんじゅうから始まり、白あえ、がめ煮、レンコンのしんじょ…。「田舎料理ですから」と謙虚な鷲頭社長。いやいや、素朴ではあるが、懐石のように上品な味わい。酒のうまみとともにお互いを引き立て合い、杯は進む、進む。
気が大きくなって「極醸酒」を張り込んだ。いわゆる大吟醸酒で、酒造好適米の山田錦を40%まで精米して用い、しぼりの段階で、圧力をかけず、酒袋から自然にしたたり落ちてくる“上澄み”を集めた逸品とか。芳純な香り、軽やかな舌触り。ああ、酔いが回る前に味わうべきだった、と、後悔。これだから飲んべえはいけない。
同地区では三月に入っても、三橋町の目野酒造(一、二日)、北野町の山口合名会社(十五、十六日)、田主丸町の若竹屋酒造(二十九、三十日)などで蔵開き行事が続く。まさに、左党にはこたえられない季節―。
(長谷川彰)

筑紫の誉酒造へは、西鉄天神大牟田線の大善寺駅からタクシーで10分。酒蔵料理は3月末までの金―日曜に提供(要予約)。5月からは筑後川でしか捕れないという幻の魚エツの料理も。同酒造=0942(62)2320。