田の浦温泉
長崎県平戸市
弘法大師ゆかりの湯は…27歳四代目が自慢の腕ふるう 10月から脂乗るアラの季節
長崎県平戸市の平戸島北端、三方を山に囲まれた入り江を眼前に望む「田の浦温泉」。同市唯一の鉱泉は弘法大師(空海)にゆかりがあり、江戸時代からやけどや皮膚病に効く湯治場として地元の人でにぎわったといわれる。地元の新鮮な食材を生かし、“おもてなし料理”を提供してくれる温泉旅館の若き四代目がいると聞き、訪ねてみた。 (平戸支局・田中玲子)

[写真説明]平戸市の近海で水揚げされた地魚を調理する四代目の山口忠洋さん
市中心部から車で約15分。海に向かって曲がりくねった細い坂を下り、パアッと視界が開けた先に創業84年の「旅館田の浦温泉」がひっそりと立っていた。出迎えてくれたのが、四代目の山口忠洋さん(27)だ。
「食材や味付け、彩りにもこだわり、大勢の宿泊客に喜んでもらえるようになりたい」と、地元の高校を卒業後、京都市の調理師専門学校に通いながら、老舗の和食料理屋で7年間、みっちり修業。昨年6月に父忠一さん(63)の跡を継いだ。
田の浦温泉は804(延暦23)年、弘法大師が近くの海岸から遣唐使船に乗り込むまでの間滞在し、地面につえを突いてわき出させたという言い伝えがある。
同市内の多くの旅館は、市が1999年に実施した掘削工事でわき出た湯を使用しているが、この旅館は24(大正13)年の開業以来、20度の源泉を温めて使用。夕暮れ時、ヒグラシの声だけが響く中、少しぬるめの湯にゆっくりと浸っていると、疲れも吹き飛んだ。
風呂から上がると、調理場に山口さんの姿があった。「北海道にはないおいしい地魚が食べたい」と、インターネットで探して訪れたという札幌市の会社員太田吉治さん(53)、真美子さん(51)夫妻のために、腕を振るっているところだった。
この日のメニューは、近海で水揚げされた地魚が中心。アラカブを日本酒と昆布で炊いた「酒炊き」。皮はパリッ、中身はしっとりと塩焼きにしたムツには、梅肉を混ぜた大根おろしを添えた。小アジも丸ごとカラッと揚げ、平戸産のジャガイモとタマネギをじっくり煮込んで冷ましたスープもこしらえた。
次々と部屋に運ばれる料理に舌鼓を打つ太田さん夫妻は「繊細な味が最高です」とにっこり。
山口さんは仕事の合間、ツアー客の案内役「平戸観光ウェルカムガイド」も務め、観光PRに力を入れる。「10月から脂が乗るアラの季節。美肌効果があるコラーゲンたっぷりの味をぜひ堪能してくださいね」。食のアピールも忘れなかった。
=2008/09/12付 西日本新聞朝刊=





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