厳木温泉
佐賀県唐津市
悲恋伝説の地には…恋人見送る姫の姿 今も 生誕地に立つ高さ12メートルの像
緑豊かな山々に囲まれた佐賀県唐津市厳木(きゅうらぎ)町。ここは6世紀前半、大和朝廷から朝鮮出兵へ向かう途中の大伴狭手彦(おおとものさでひこ)と恋に落ちた地元豪族の娘、松浦佐用姫(まつらさよひめ)が生まれた土地と伝えられている。「浦島太郎伝説」「羽衣伝説」と並ぶ「日本三大伝説」に数えられる「佐用姫伝説」。その名にあやかって設立された厳木温泉「佐用姫の湯」周辺は、伝説に彩られた地域独特のどこか不思議な雰囲気が漂う。 (唐津支局・小川俊一)

[写真説明]道の駅「厳木」の敷地内にそびえ立つ高12メートルの「松浦佐用姫像」

[写真説明]伝説にちなんで名付けられた厳木温泉「佐用姫の湯」。癒やしの空間として親しまれている
「海原の沖行く船を帰れとか 領布(ひれ)振らしけむ松浦佐用比売(ひめ)」 (山上憶良)
万葉集にも歌われた伝説の結末は悲しい。日本をたった狭手彦を鏡山(唐津市鏡)頂上で見送った佐用姫は、着ていた羽衣「領布」を振り、悲しみのあまり石になってしてしまった。
11年前、旧厳木町が制作した高さ12メートルの「松浦佐用姫像」が道の駅「厳木」内に立っている。身をくねらせ、懸命に「領布」を振る悲しい場面を再現する。
像の足元からその姿を見上げた。彼女の視線の先は大陸かと思いきや、向いていたのは逆。実は電動仕掛けで約15分かけてゆっくり一回転する。目を凝らさないと分からないほどの速度だが「どこにいるのか狭手彦」と探し続けるかのようだ。
石となった佐用姫にも会える。同市呼子町加部島の田島神社境内にあるのが、その名も「佐用姫神社」。佐用姫が石化した姿と伝わる丸い石は「望夫石」と呼ばれ、姫がかがみ込んだから丸い形だという。同市和多田先石の松浦川沿いにある高さ約10メートルの岩には、佐用姫が狭手彦を追って鏡山から飛び降りた際に残した足跡とされるへこみもある。
「佐用姫生誕の地として、厳木町の愛着は強いですよ」と話すのは厳木コミュニティーセンターの山口恭弘館長(61)。1927(昭和二)年に地元の医師らが山中に建てた高さ約2メートルの佐用姫生誕碑は、今も周辺住民が手入れを欠かさない。10月に地元で開かれる祭り「中島山笠」の飾り人形も、きらびやかな佐用姫の姿だ。
ようやく、目的の「佐用姫の湯」=0955(63)4126=に着くと、相島茂範所長(66)が出迎えてくれた。入館料のみで鑑賞できる大スクリーンでの映画上映(原則週三回)や五種類16床の岩盤浴などは若者にも人気があるという。温泉成分はアルカリ性で、PH9・6という県内でも屈指の高い値。「美しかった佐用姫と同じくらい肌がすべすべになる」と相島さん。地域の佐用姫への愛情と心地よい温泉で、体はほかほかに温まった。
=2007/11/16付 西日本新聞朝刊=





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