佐世保駅
バカを言っちゃいけねえよ。アナゴと言えば、将軍様の時代から、「江戸前の穴子」に決まってらぁ。江戸っ子じゃないあたしだって、アナゴと聞いたらべらんめえ調になっちまう。
アナゴにはチョイとうるさいよ、あたしは。アナゴは生麦(横浜市鶴見区)に限る。そいつをさっとあぶり、甘がらい「ツメ」をチョチョンと付けたあなごすじ。こいつは、たまらないねぇ。それから、ホクホクに揚げたアナゴの天ぷら。「これぞ江戸前の味」ってなもんよ。
で、何かい。長崎はJR佐世保駅の「あなごめし」が評判だって。無理無理、「江戸前」のアナゴにはかないっこない。でも、ま、ものは試し…。
おーっと、こりゃ豪勢だねぇ。折り詰めのふたを取ると、アナゴがびっしり。よく見ると、甘がらく味付けしたアナゴに、ちょっとだけシイタケが混ぜてある。ハハーン、これでうまみを出そうっていう趣向かい。なかなか粋じゃねぇか。
ん、アナゴを細かく刻んである。こいつは珍しい、もっと幅広に刻むのが常道じゃねぇの? 「アナゴは皮と身の間のぬめりが気になりますが、これなら大丈夫です」(発売元の松僖軒の店長、森孝之さん)。確かに、ぬめりが気にならねぇ。なかなかてえした工夫だ。
この味は何より、アナゴがいいんだろ。佐世保はひと昔前の江戸の海に似て、いいアナゴが捕れるからね。
アナゴの脇には刻みのりと卵焼き。どっちもあっさり味で、濃いめの味付けのアナゴとは、絶妙なバランス、憎いねぇ。それにデザートとして添えてある白豆のきんとんも後味すっきりで、オツなもんよ。
悔しいけどうまいねぇ、この駅弁は。さすが、半世紀前から作り続けられているだけのことはある。間違いない、あたしは太鼓判を押すよ。
松僖軒=0956(23)6721
(メディア編集部・野中彰久)
=2006/11/29=
2006年11月29日更新
※ 駅弁の内容は季節によって変わることがあります。