第48期王位戦 第4局


深浦、攻めきって3勝目 王位奪取へ王手
三勝目をあげた深浦八段(右)
 福岡県筑紫野市の二日市温泉「大丸別荘」で行われていた将棋の第四十八期王位戦七番勝負第四局は九日午後六時四十三分、深浦康市八段(35)が百二十五手までで羽生善治王位(36)=王座、王将=を下し、対戦成績を三勝一敗として、初の王位獲得にあと一勝と迫った。

 持ち時間八時間のうち残り時間は羽生、深浦とも七分だった。第五局は八月二十九、三十の両日、徳島市の「渭水苑」で行われる。

 二日目は、羽生の封じ手「8八歩」(58手目)で再開。羽生が8五歩(64手目)から反撃に転じ前例のない局面に入ったが、深浦は一歩も引かず、2五歩(69手目)から3三歩(71手目)と攻勢を続けた。

 羽生は6五桂(100手目)として寄せ合いを目指したが、深浦は攻防を兼ねた5六金(109手目)で羽生の粘りと攻めを封じ、さらに4二竜(111手目)から厳しく迫り、一気に寄せきって難局を制した。双方ともこん身の力を出した密度の濃い将棋だった。
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 ●3三角はギリギリ
 ▼深浦康市八段の話 前例のある将棋で3三歩(71手目)までは、こんな感じかなと思えました。3三角(81手目)と打ち込みギリギリかと思いましたが勝ちが分かったのは最後の詰みが見えたところです。
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 ●陣形の薄さ響いた
 ▼羽生善治王位の話 陣形の薄さが響きました。どの変化もこちらが薄く、全体的にまとめるのが難しかったんです。6九飛(106手目)のところも、こちらが足りないと思いました。構成の難しい将棋でした。
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 ●盤側=難局制した深浦の決断
 後手・羽生善治王位の8五歩(64手目)−いくつかある実践例の一つをたどってきた局面が、この一手で未知の世界へ。先手の深浦康市八段が断続的に長考、羽生のほぼ半分だった消費時間が見る間に縮まった。
 63手目までは前例がある。そのまま進めば、先手が勝っている。控室のプロ棋士たちは「後手はどこかで変化しなければならない」という。それが64手目で現れたのだ。
 深浦があぐらから正座に座り直した。心持ち、頬(ほお)に赤みが差している。9筋を揺さぶられ、角で飛車と金を狙われる展開に、懸命の打開策を探る。だが、端座して局面を見詰める姿に、苦悩は感じられない。
 「深浦は根性の棋士です」と、故花村元司九段門の兄弟子・森下卓九段は評する。九勝一敗の好成績を挙げながら、序列の差で逃した昇級。通常なら残留が約束される四勝五敗で二度もA級を落ちている。
 努力しても報われないことがある。しかし、努力しなければ報われない。深浦はそのことを骨身に刻んできた。最近、色紙に好んで書く「決断」にも、その体験が張り付いている。努力には決断が必要なのだ。
 終盤、深浦は顔を真っ赤にして羽生の粘りに耐えた。羽生も頭の熱を鎮めるように、扇子を開いてあおいだ。最後は知力を超えた戦いだった。「決断」という深浦の覚悟が難局を制したようだ。対局の疲れを顧みず、大盤解説場に現れた両者に、二百人を超えるファンから惜しみない拍手がわいた。 (竹原元凱)