第5局 11月5日(月)
【ひと】第18期女流王位を獲得した 石橋 幸緒さん
タイトルを奪取した石橋新女流王位
 「負けました」。師匠がため息のような小さな声で投了を告げると、厳しい表情のまま深々と頭を下げた。「長い勝負が終わった」。感想戦に入り、ようやく表情が緩んだ。  五日、東京であった女流王位戦第五局。師匠の清水市代二冠に挑み、二勝二敗で迎えた大一番。四度目の挑戦で初めて女流王位を手にした。一九九九年の女流王将に続き、二度目のタイトル獲得。奪取した相手はいずれも師匠だ。

 生まれつき病弱で入退院を繰り返した。八歳で将棋と出合い、清水さんの父が主宰する将棋教室に入門した。九三年にプロ入りし、九六年の女流王位戦で初の挑戦権を得るなど順調に成長。清水さんと中井広恵女流六段の「二強」に迫る若手として期待を集めた。

 だが、初めて師匠からもぎ取った女流王将位も翌年には師匠に奪い返され、その後はタイトル挑戦権は得るものの、ことごとく「二強」にはじき返された。今期の女流王位戦も白星を先行させながら、タイに持ち込まれる展開。苦しみながらようやく師匠の壁を打ち破った。「一時あきらめそうになったこともあった。棋士として新しい命をいただいたようです」

 今年五月、女流棋士の待遇改善などを求めて女流棋士十七人で日本将棋連盟から独立、日本女子プロ将棋協会を設立した。協会事務にも携わる多忙な日々を過ごす。今期の女流王位戦には同協会所属棋士として初のタイトル獲得の期待が高まった。「自分ではあまり意識しないようにしたが、多くの方が応援してくださった。感謝したい」  石橋開雲の号を持つ書家でもある。東京都台東区在住。二十六歳。  (文化部・江藤俊哉)