
-まずすべきことは。
「口の中の観察です。体が不自由なお年寄りは自分から口の不調を訴えることは少なく、ひどい状況のまま長期間放っておかれていることもあるからです。まずは口の中をのぞいて、どんな入れ歯を使っているのか、歯や舌などに汚れがないかなどをしっかり見てください。虫歯や歯ぐきのはれ、入れ歯の不調などが確認されたら、歯科医にみせてください。汚れが目立つようなら口腔(こうくう)ケアが必要です」
-口腔ケアはだれがしたらよいか。
「お年寄りが一番慣れている人が行うのが理想です。慣れてない相手だと口を開けることさえ嫌がることがあります」
-毎回の口腔ケアはどうやって始める?
「ポイントの一つが体位。誤嚥を起きにくくするために座位を確保しましょう。それができない場合はベッドを45度まで起こし、頭を前方に曲げてもらってからケアを。ベッドから起きることができないときは、体を横向きにした状態でケアしてください」
「誤嚥対策として、お年寄りに声をかけ意識をさますことも大事です」
-次にどうすべきか。
「最初に口の中を観察して、どこが汚れているかの確認を。開口が難しいときは、それを助けるバイトブロックという道具もあります」
「入れ歯を使用している場合は入れ歯を外すこと。金具部分に指をかけて外すのがこつです。入れ歯の脱着には方向があるので、力を入れすぎないように気をつけて」
-入れ歯を外した後はどうする。
「残っている歯、歯肉や舌をきれいにします。まずは、うがい薬を浸したスポンジブラシで口の中の大きな汚れを取り、口の粘膜をきれいにしてください」
「続いて歯ブラシで歯磨きをしてください。電動ブラシの使用も効果的です。歯と歯の間の汚れは歯間ブラシを使って。歯がまばらに残っているときは1本ずつていねいに磨き、入れ歯の金具がかかる歯は特に汚れがつきやすいので念入りに磨いて。歯磨き粉は特に必要ありません」
「総入れ歯で自分の歯が1本もなくてもブラッシングは必要。とりわけ入れ歯と接している歯肉には食べかすや細菌などがつきやすく、歯周炎や口内炎などの原因になります。口をよくすすぎ、やわらかい歯ブラシで歯肉、上あごをブラッシングしてください」
-仕上げは。
「舌ブラシで舌の奥から手前に軽く10回擦り、舌苔(ぜったい)(舌の上の白い汚れ)を取ること。最後にうがい薬を入れた水でよくうがいしてもらい、入れ歯を装着したら終わりです」
-外した入れ歯はどうしたらいいのか。
「洗面所などで水道水をかけて洗い、やわらかいブラシで汚れを落としましょう。傷をつけると細菌がつきやすくなるので注意してください」
「入れ歯を口に戻す際は布などでふかずに、湿らせたまま口に入れるのがよいです」
「入れ歯のかびをとる薬は、1週間に1回程度使ってください」
-口腔ケアの頻度は。
「若い世代と同様、毎食後に行うことが理想です。入れ歯の洗浄を含めて1回当たり3―5分程度で済ませるのがポイント。長時間かけると次第に面倒くさくなって長続きしません」
-ほかに注意点は。
「本人ができることはなるべく本人にさせてほしい。歯ブラシを持って手を動かすことはリハビリにもつながります」
「口腔ケアは習慣付けたいものですが、無理強いは禁物。お年寄りの体調が悪いときや嫌がるときは、様子を見ながら、できる範囲で取り組んでください」
「歯垢(しこう)はブラシで除去できますが、歯垢が石灰化した歯石の除去は難しい。歯石の対処は歯科医に任せてください」
「歯垢であれ歯石であれ、汚れが口の中に残ったままだと、虫歯が進んだり、食欲が落ちたり、感染症にかかりやすくなったりします。口腔ケアに取り組んでみて不明なことがあれば歯科医に相談を。訪問診療をする歯科医も増えています」
【写真説明】内藤徹准教授
=2012/02/06付 西日本新聞朝刊=





