13年前に天疱瘡を発病した福岡県の会社員山本正孝さん(53)にとって冬はつらい季節だ。天疱瘡を患ったことに伴って体の抵抗力も落ちているため、インフルエンザなどの感染症にかかってしまうと治りにくく、重症化することもあるからだ。「感染しないよう人混みを避けるしかない」と話す。
山本さんは口の中の粘膜がはがれる天疱瘡の特徴的な症状も出るため、辛い物や酸っぱい物は食べられない。水膨れは全身のどこにでも現れ、けがをしてもばんそうこうが貼れないことがある。また発症間もないころは症状がひどく、全身がただれてやけどのようになり寝返りさえ打てず、眠れないこともあった。山本さんは「死を覚悟することもあった」と振り返る。
現在は2カ月に1度の定期診療を久留米大病院で受け、症状は比較的落ち着いているという。
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天疱瘡は、自分の皮膚の表皮などの成分を攻撃する抗体が体内で作られてしまう自己免疫性の疾患。詳しい原因は分かっておらず、抜本的な治療法も確立されていない。
厚生労働省の調査では40、50代で発症する例が多く、女性の割合がやや高い。医療費の自己負担分への公費助成がある特定疾患に同省が指定しており、全国で4648人が特定疾患医療受給者証の交付を受けている(2010年度末現在)。
久留米大学医学部皮膚科学教室の橋本隆教授によると、天疱瘡は顔などの水膨れが破れ、ただれて赤くなることがあるため、偏見を受ける患者もいる。症状が重いと患者の生活の質は低下し、仕事を辞めざるを得なかった患者もいる。まれではあるが、命にかかわる事態に陥る危険もある。
暮らしや生命を脅かしかねない病気だけに、橋本教授は「適切な治療によって症状を軽減させることが大事」と強調。「早期発見も大切」と続ける。治療法としては(1)ステロイドの内服(2)血漿(けっしょう)交換(3)免疫抑制剤の投与-などがあり、症状が軽くない場合は、入院して集中して治療する必要があるという。
だが、医師たちが症例に出合う機会があまりないため、医師たちの間にさえ、病気への知識と理解が広がっていない状況があるようだ。
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山本さんも当初は自分が何の病気か分からない上、専門医にもなかなかたどりつけず、苦労した経緯がある。口の中に水膨れができた発病当時、口内炎を疑って耳鼻咽喉科へ。2カ月通院したが医師は適切な診断ができず、処方された塗り薬ではなかなか治らなかった。「そのころは自分でインターネットで病気について調べ、英語のホームページも苦労して読んだ。どうすれば治るのか、少しでも情報を得て不安をぬぐいたかった」と山本さん。結局、大きな病院で受診して天疱瘡と分かり、橋本教授がいる久留米大病院を紹介された。
そんな経験のある山本さんに、橋本教授は患者会の設立を提案。「患者が少ない病気だからこそ、当事者たちが集って病気について学んだり、交流したりする場が必要」との思いがあった。
久留米大側が運営を支援することもあって、誕生した患者会は、天疱瘡と同様、全身に水膨れができる「類天疱瘡」の患者も含めて現在、九州を中心に20―70代の男女33人が参加。ホームページを見て、関東や関西からの会員登録もある。名称は「天疱瘡・類天疱瘡友の会」。会長は山本さんが務める。
活動としては(1)会報の発行(2)医師を講師とした学習会や年1回の交流会の開催-など。昨年3月には会誕生に合わせて第1回の学習会・交流会を久留米大医学部で催し、参加者たちは情報交換をしたり、悩みを語り合ったりした。
問い合わせは同大医学部皮膚科学教室=0942(35)3311。
【写真説明】天疱瘡・類天疱瘡友の会が開いた第1回学習会。患者や家族が医師の講演に耳を傾けた
=2012/01/16付 西日本新聞朝刊=





