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響き合う命の力 セラピー犬で 認知症の高齢者が変わった 緊張がほぐれて笑顔を取り戻す

[キーワード]医療情報

[更新日時]2010年09月06日

 ■福岡の介護老人保健施設

 動物には人の心を癒やしたり、元気づけたりする力がある-。そう感じている人は多いのではないだろうか。空前のペットブームのように、1人暮らしのお年寄りや、子どもがいない夫婦にとっては、犬や猫が家族以上の役割を果たす場合もある。では、老いて認知症になった人にも、動物は特別な力を発揮するのだろうか。福岡市早良区の介護老人保健施設「からざステーション」で、お年寄りと「セラピー犬」との触れ合いを見た。

 「こんなにかわいい犬はおらんよ」

 いすから立ち上がった80代のおばあちゃんが感に堪えない、といった様子で、茶色い毛並みに手を伸ばす。犬を追う目には、涙と笑みが浮かんでいる。

 女性はデイケアの利用者。アルツハイマー型認知症が進み、普段なら、まず、5分もたたずに部屋を出ていってしまう。表情も乏しい。「そんな方がずっと部屋におられて、涙を流して喜ばれるなんて」。職員の山口廣子さんの声も弾んだ。

 認知症の症状として、日々決まった行動を繰り返すケースがある。70代の男性もその一人。デイケアに通って来ても、いつも同じ席にしか座らない。でも、この日は、犬がいる部屋に初めて移り他のお年寄りになでられたり、おもちゃを追って駆けたりする犬の様子を1時間近く眺めていた。

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 からざステーションが、九州補助犬協会(福岡県糸島市)から「セラピー犬」を有償で派遣してもらうようになったのは5月から。2、3匹を月に1度、連れてきてもらい、入所しているお年寄りたちが集まるフロアと、デイケアに通所するお年寄りたちの部屋で、それぞれ1時間、触れ合いの時間を設けている。そのたびに「目を見張る変化がある」という。

 犬を嫌がって避ける人もいるが、「小さい時にかまれたから恐ろしか」と昔の記憶を説明したり、いつの間にか優しくなでたりする人も。重い認知症で、会話が難しい人が「北海道犬を飼っていたことがある」と話し始め、マリアという白い大型のセラピー犬の首輪の綱を持って、記念写真に収まったこともあった。

 「言葉のキャッチボールが難しい認知症の人にとって、周囲となじみの関係を築くのは難しい。でも動物が入るとリラックスし、コミュニケーションを深めることができるようです」と施設長の藤井眞一医師。

 徘徊(はいかい)や暴力的な行動といった認知症の症状は、周りへの緊張や不安が背景にある。セラピー犬によって不安や緊張を和らげることができれば、そんな症状も抑えることにつながるという。

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 藤井医師らスタッフたちは今、犬とのふれあいを「動物介在療法」という一つの治療手段に高めることができないか、と分析を始めている。

 犬がいる間、お年寄りによっては徘徊などの症状が消える。では、そういった症状が起こりやすい夜間ではどうか。それを調べるため、昼間に犬と触れ合った日の夜の様子と、それから2週間後の夜の状態の観察に乗り出している。

 犬の名前や「この前も来ていた」という記憶が蓄積できない認知症の人たちでも、犬との触れ合いを重ねていくと、記憶面で何か変化が生じるのではないか。それについても調査を進めているという。

 からざステーションでは、「音楽療法」や化粧を施す「化粧療法」などにも取り組んでいる。

 ただ山口さんは「自分を慕って寄ってきてくれ、触ると温かい。生き物である犬との触れ合いは、人にはできない効果をもたらしてくれるのでは」と話している。

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 ●セラピー犬、広がる活躍の場

 人に友好的に接することができるよう訓練されているという「セラピー犬」を活用する取り組みは介護施設だけでなく、病院や障害者施設、特別支援学校などにも広がっている。

 「動物介在活動」といい、利用者や子どもたちに、ストレスを和らげてもらったり、リフレッシュしてもらったりすることが目的だ。

 セラピー犬を育成する団体は各地にあり、九州補助犬協会はその一つ。からざステーションのほか、地元糸島市の介護老人保健施設、佐賀県の精神科病院にもセラピー犬を派遣している。

 ただ国が指定した機関での認定試験をパスして認められる介助犬などと異なり、セラピー犬に公的な認定基準はなく、各団体がそれぞれ独自に育成している。

 同協会の桜井昭生副理事長は「セラピー犬に必要な資質は、人のためになることが喜びと感じられること。そんな犬を訓練の対象としている」と話す。同協会=092(327)0364。

【写真説明】セラピー犬と触れ合ううちに、認知症の女性の乏しかった表情に笑みが浮かんだ=福岡市早良区のからざステーション

=2010/09/06付 西日本新聞朝刊=

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