
「こんにちは」。折り紙に夢中の子どもたちの部屋を、市が委託する臨床心理士藤田純さん(48)と市の保健師が訪れた。いずれも普段着姿である。
真っすぐに折れているか、「花」や「飛行機」など、折るものを正しく理解しているか…。すべての園児に目を配る。
気になれば話し掛け、きちんと理解しているか、目を合わせ会話ができるかなども確かめる。午前中いっぱいかかりっきりだ。
午後は藤田さんが「心配に感じた子ども」について保育士から話を聞き、日ごろの様子と重ね合わせる。園でも家庭でも、あるいはどちらかで心配な行動がある場合には適切な対応が必要になる。
そこで保護者や保育士に対処法をアドバイスする。経過を見て必要であれば、専門の相談・療育機関につなぐ橋渡しも担う。
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ただ保護者や周囲の理解や関心が高いとはいえないことが、取り組みへのハードルを高くしている。

飯塚市内の保育所によると、十数年ほど前から様子が気掛かりな園児が目につくようになった。これまでも保護者には診断を受けさせるよう勧めてきたのだが「わが子に症状があるという事実を認めたくなかったり、性格的なものだと軽く考えたりして、断る人もいるのです」(ベテラン保育士)。
その結果、動き回る子どもの症状を理解できずにたたいてしまう例や、母親の子育てに原因があると誤解して家庭内暴力(DV)につながる悲劇もあったという。
また、保育士だけの心掛けでは見過ごしてしまうこともある。
数年前、高校のスクールカウンセラーだった藤田さんは、人間関係がぎこちないため周囲になじめず不登校になった生徒と面談した。保護者に診断を受けさせるよう勧めたところ「広汎性発達障害」と判明した。保護者は「これまで誰もアドバイスしてくれませんでした」と打ち明け、藤田さんも「もっと早く対処すれば改善していただろうに」と残念がる。
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発達障害が現れるメカニズムには未解明な部分が多いとされる。

たくさんの症例を知る金原洋治さん(59)=山口県下関市、かねはら小児科医院長=は、遺伝や胎内環境、気質などの「素因」が主な原因と考えられているが、幼児期からのテレビやゲーム、親子関係、生活リズムなどの「養育・社会環境」も症状の程度や現れ方に影響し、「近年増えた一因も、さまざまな環境の変化にあるのではないか」と説明する。
授業中、教室を飛び出す児童がいた。「アスペルガー症候群」に多い症状で、教師の声と周囲の雑音とのボリュームをうまく調整できずパニックに陥ったのだ。
初めは教師も驚き、走り回る児童を押さえることに懸命だったが、金原医師らと対応を協議した結果、児童が心を落ち着けることのできる保健室や校長室など別の空間を設けて「(落ち着いたら)必ず教室に戻る」というルールをつくった。今では児童も集団生活になじんできたという。
金原医師は、子どもが柔軟性に富んだ早い段階で、特性に応じて周囲の人たちのかかわり方を変えたり、刺激を少なくする工夫をしたりすることが「社会性を身に付けるトレーニングになり、優れた個性を引き出すことにつながるのです」と説明する。適正な療育環境を知るためにも、まずは子どもを正しく理解することの大切さを訴えている。
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●ワードBOX=発達障害
アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などに分類される。注意力がない、怖がり、引っ込み思案、こだわりが強いなどの特徴がある一方で、ひらめきや直感力に秀でるなどの特性がある。
【写真説明1】藤田 純さん
【写真説明2】金原洋治さん
=2010/01/25付 西日本新聞朝刊=




