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前立腺がん 手術後の尿漏れ 人工括約筋埋め込みが効果 保険利かず高額がネック

[キーワード]泌尿器科

[更新日時]2010年01月18日

 年配の男性に多い前立腺がんの手術は、早期であれば完治が期待できる半面、尿道括約筋を傷めることで術後の尿失禁に悩まされる患者も少なくない。多くは一時的なものだが、ひどい場合はいつまでも続き、生活が不自由になる人もいる。括約筋を鍛える体操はあるが、それでも効果がない重症の患者のために、人工の器具を体内に埋め込む手術によって排尿をコントロールする治療法があるという。

 福岡市東区に住む77歳の男性は昨年10月、この治療を受けたことで、7年間も苦しんだ尿漏れから解放された。

 採血による腫瘍(しゅよう)マーカー検査「前立腺特異抗原(PSA)検査」で早期のがんが見つかった男性は、2003年の夏に完治を目指して手術を受けた。尿漏れは術後に起きやすい合併症だった。

 前立腺がんの手術は、前立腺そのものと精嚢(せいのう)、リンパ節を摘出し、膀胱(ぼうこう)と尿道を縫い合わせる。その際、尿道を締める筋肉である括約筋を傷つけてしまうことがある。

 男性の場合、座ったり寝たりしているときは問題なかったが、立ち上がった瞬間に尿が流れ出た。歩くと下着がぐしょぐしょになった。

 下着に尿パットをつけ、1日に4―5枚交換した。外出すれば「においはしないだろうか」「パットをどこに捨てようか」と気にしながら行動しなければならない。冬は、ぬれたパットで下半身が凍えるほどだった。

 器具を埋め込む治療を受けた男性は「ストレスがなくなった」と語る。今年の初詣ででは、神社近くの喫茶店で好きなコーヒーを心ゆくまで楽しむことができたという。

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 一般的に、前立腺の摘出手術を受けた70%ほどの人が一時的な排尿障害になるといわれる。多くは数カ月で治るが、20―10%の人はその後も続く。おなかに力を入れたら少量の尿が出る例が大半だが、2―1%の確率で、ひどい尿漏れを起こすことがあるという。

 症状が軽い人は、寝たり、いすに座ったりして5秒程度、肛門(こうもん)をキュッと締める体操を繰り返すのが効果的とされる。この体操で尿道括約筋の一部が回復すれば、尿漏れの頻度は少なくなる。

 このほか、コラーゲンを注射することで尿道を狭くし、漏れる量を減らす方法もあるが、重症の人には十分な効果が得られにくいという。

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 男性の手術を担当した原三信病院(福岡市博多区)の武井実根雄(みねお)泌尿器科部長は「症状が重い人には、人工尿道括約筋をつけるしか手はありません」と説明する。

 米国で開発された「人工尿道括約筋」は、シリコンでできている。尿道の一部を、カフと呼ばれる直径4―5センチのリング状の器具で包み込む。カフは、内部を通る特殊な液体の水圧によって緩んだり締まったりする。普段は締まっており、患者は尿意を覚えると、陰嚢(いんのう)に埋め込まれた水圧を調整するコントロールポンプのボタンを操作することによって排尿する-というしくみだ。

 武井医師によると、人工尿道括約筋をつける手術は2時間程度で、患者の満足度も高いというが、課題もある。健康保険が適用できず現在は全額自己負担。一部の病院では先進医療に指定され、入院費などに保険が利くが、それでも180万―200万円程度かかる。

 また、発売元の日本代理店「タカイ医科工業」(東京)によると、この手術が原因で感染症を起こす例が2・7%。体内の組織にただれが生じる例も5・4%確認されているという。武井医師は「早く保険適用され、この治療法が多くの人に広まることを願っている」と話している。

【写真説明1】武井実根雄医師
【写真説明2】人工尿道括約筋のしくみ

=2010/01/18付 西日本新聞朝刊=

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