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障害者のコミュニケーション ハイテクで広がる支援

[キーワード]医療情報

[更新日時]2008年03月30日

 ■関連機器充実 周囲が協力・活用を

 話すことや書くことが困難な障害者のコミュニケーションを支援する動きが、少しずつ広がっている。背景にあるのは、パソコンの普及や周辺機器の開発。ただし、限られた身体機能による機器操作や意思表示には時間もかかる。医療関係者は「意思を受け止める側にも理解が必要」と呼び掛けている。 (野中貴子)

 ▼メールで会話

 「スイッチに問題はないですか」。北九州市八幡東区の荒川孝一さん(51)方をコミュニケーション支援のために訪れた北九州市立障害福祉センターの言語聴覚士、田中愛啓さんが話し掛けると、ベッドで荒川さんが小さくうなずいた。

 荒川さんは声が出ない。傍らにパソコン。左手に、親指大の小さなスイッチが載っている。筋肉の委縮が進む筋ジストロフィー症で、以前は車いすで外出していたが7年前に座れなくなり、キーボードも打てなくなった。以来、スイッチ1つで文字を入力できるパソコンの専用ソフトを使い、意思を伝えている。

 主流のソフトは、パソコンの画面に平仮名や数字が碁盤の目のように並び、50音のあ行、か行の順に色が変化。か行に色がついたときにスイッチを押せば、次はかきくけこ順に変色し「き」に色がついたときにスイッチを押せば「き」を入力できる仕組みだ。

 荒川さんは「ふうせんバレーボール」の発案者で、ふうせんバレーボール振興委員会の会長。友人との打ち合わせやおしゃべりはメールで、毎日約10件を送信している。インターネットで好きな歌を聴いたりもする。

 荒川さんはスイッチをカチッ、カチッと押し、ゆっくりと言葉を打ち出した。「孤独なんですよね。パソコンは社会に開かれた窓のようなもの」

 センターは操作に欠かせない市販のスイッチを約40種類用意し、各自に適したタイプを薦めている。息を吹き掛けて反応するものもある。

 「でも機械は万能ではない」と田中さん。「たんを取って」などの短文を提示して本人に選んでもらったり、平仮名を書いた透明な文字盤を使って視線を読み取ったり…。機械以外の方法と併用する人も多いという。

 ▼画面の変化で

 人は乳幼児期から体験を通じて意思伝達を習得するが、先天性重度障害児は体得が困難なため、特別な療育が必要だ。

 北九州市立総合療育センターは1988年、全国でも草分けの「ハイテク外来」を開設。毎月第二金曜日、言語聴覚士らがチームを組み、遊びながらパソコンが使えるように導いている。

 まずは手や足、舌など、動かせる体の部分を確認し、スイッチやマウスなどの適切な入力機器を選択する。「スイッチを入れると機械が反応。そのやりとりを楽しむことから始めます」と志井田太一・作業療法係長。「自分とスイッチ、機械の関連から自発性を高め、そこに他者とのかかわりが生まれてコミュニケーションの概念につながる」という。

 車いすに乗った脳性まひの女児(12)がパソコンに接続された直径6センチのスイッチを右手で押していた。パソコンの画面に昔話「桃太郎」が紙芝居形式で進行する。

 女児の気持ちは、その表情から読み取るしかない。スイッチを押す行為はときに介助が必要だが、家族は「画面が変化すると娘が笑顔を見せる。それがうれしい」と話す。女児は受け身でなく、自分で機器を作動させることを学んでいる。意思発信の第一歩だ。

 ▼共感すること

 国内唯一の脊(せき)髄(ずい)脊(せき)椎(つい)疾患専門病院である福岡県飯塚市の総合せき損センターは79年の発足と同時に「医用工学研究部」を設け、福祉用具の開発に取り組んできた。

 コミュニケーション支援機器は、この10年間で7種類を量産化。スイッチには、舌の先で軽く触れるだけで機器を作動させる「リップクリック」や、少し押せばテレビのチャンネルを切り替え、長く押せば呼び出し音を鳴らせる「テレビトコール」などがある。

 パソコンのキーボードを押す棒「ソフトフィットマウススティック」は、くわえても歯が痛まないように工夫。九州歯科大(北九州市)の協力を得て、湯で温めると柔らかくなり、歯形をつけられる歯科素材を棒の片方に取り付けた。

 コミュニケーションの成立で障害者の社会生活の場は拡大する。その方法はまだ発展途上だが、芝啓一郎副院長は「受け止める人は自分が障害者になったらと考えてください。共感が大切」と助言している。

 ●医療機関などの連絡先
■北九州市立総合療育センター
 小倉南区春ケ丘10-
 2093(922)5596
■総合せき損センター
 福岡県飯塚市伊岐須550-
 40948(24)7500
■北九州市立障害福祉センター
 小倉北区馬借1‐7‐
 1093(522)8724

【写真説明1】総合せき損センターが独自開発した、舌の先で押すスイッチ「リップクリック」を説明する芝啓一郎副院長
【写真説明2】50音が書かれた透明な文字盤。相手の視線を読み取り、意思疎通を図る

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