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西日本新聞 医療・健康

九州の医療ニュース

リタリン、処方厳格化 成人のADHD治療に波紋 乱用が問題化 同成分の新薬は小児限定

[キーワード]医療情報

[更新日時]2008年01月07日

 向精神薬「リタリン」の処方が今年から厳格化され、成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)の当事者に波紋が広がっている。昨年まではADHDの治療にも使うことができたが、リタリンの乱用が社会問題化し、ナルコレプシー(いわゆる居眠り病)以外に処方することができなくなったからだ。国内初のADHD治療薬としてリタリンと同成分の「コンサータ」が昨年12月に発売されたものの、対象は小児に限られている。成人は薬物療法が受けられなくなる恐れもある。 (坂本信博)

 ▼集中力が持続

 福岡市に住む会社員の男性(28)は4年前にADHDと診断され、リタリンを服用し始めた。
 毎日決まった時間に飲むのではなく、会議など集中力が必要な仕事の前に飲む。デスクワークは苦手だが、飲んでおけば3時間近くは作業を続けられる。「ここぞというときに、頭の混乱が静まって根気を持続できる」という。

 リタリンは向精神薬「塩酸メチルフェニデート」の商品名で、脳の神経伝達を促進する働きがある。保険適用の対象は日中に過度の眠気を生じるナルコレプシーとうつ病だけだが、多動を一時的に抑制できるため、現場の医師の裁量でADHDの薬物療法として処方されることも多かった。

 くだんの男性は、自分がADHDであることを職場で公表していない。「医師の指導を受けてタイミングよく服用することで何とか仕事をこなしてきた」と打ち明ける。

 ▼不安の声急増

 北九州市戸畑区にある「こぶしメンタルクリニック」院長の重富裕司医師によると、リタリンはADHDの子どもの約70%に有効とされる。行動療法や日常生活の能力を身に付ける訓練などと組み合わせるのが基本だが「リタリンを服用することで日常生活の支障となる問題行動が減少し、社会生活を送りやすくなる」と重富医師はいう。

 しかし、リタリンには気分の高揚など覚せい剤に似た作用があり、医師のずさんな処方やインターネットでの不正売買による乱用が表面化した。依存症や幻覚・妄想などの副作用もあり、厚生労働省は昨年10月下旬に効能・効果からうつ病を除外。今年からは、処方できる医師を登録制にするなど医療用麻薬並みに流通管理を厳格化した。

 同クリニックでは昨秋以降、リタリンが処方されなくなることへの不安を訴えるADHD当事者からの相談が増えたという。重富医師は「薬物療法で会社勤めに適応してきた人たちは少なからずいる。代替薬を用意しなければ彼らを切り捨てることになる」と訴える。

 ▼適応拡大求め

 リタリンの処方を厳格化する一方、厚労省は同一成分の「コンサータ」を国内初のADHD治療薬として承認、昨年12月中旬から販売されている。

 ただし、適応年齢は18歳未満。厚労省は「あくまで小児用。製薬会社に成人の治験データを出してもらって追加審査をするまでは、成人への処方は認められない」(審査管理課)としている。

 ADHDの治療に詳しい第一精神保健クリニック(福岡市博多区)所長の玉井光医師によると、成人では薬が効きにくい面があり、生活指導や心理療法などを組み合わせた複合的な治療が必要だが、米国ではADHDと診断された成人の50%が薬物療法を必要としているとのデータもあるという。

 成人への薬物療法としては、非中枢神経刺激薬「アトモキセチン塩酸塩」(商品名・ストラテラ)の治験が始まっているが、現在のところ服用できる薬はない。ADHD当事者や家族を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)「えじそんくらぶ」(事務局・埼玉県)は先月中旬、コンサータを販売する製薬会社ヤンセンファーマに適応年齢拡大などを要望した。同社は「今後1年間、適切な処方や流通が行われているかを確認したうえで、成人用の臨床開発をするか判断したい」としている。

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 ●ワードBOX=注意欠陥多動性障害(ADHD)
 先天性な脳機能障害などが原因とされる軽度発達障害の一種。整理整頓ができない▽忘れっぽい▽落ち着きがない▽多弁▽考えずに行動する▽順番を待てない-など不注意、多動性、衝動性の3つが主症状。根本的な治療法はまだないが、早期発見・療育で社会生活への適応力をつけられる。周囲の理解不足などから過剰なしつけや虐待、いじめを受けて傷つき、うつ病や自尊心の低下、不安神経症など「二次障害」を生む事例も少なくない。ADHDを診断できる専門医は全国的に不足している。

【写真説明1】処方が厳格化された向精神薬「リタリン」
【写真説明2】重富 裕司医師
【写真説明3】玉井 光医師

=2008/01/07付 西日本新聞朝刊=

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