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加齢も病も、悲観せずに 「健やかに老いる」公開講座シンポ詳報 福岡県医師会と西日本新聞社共催

[キーワード]シンポジウム

[更新日時]2009年12月21日

 高齢社会を生きる私たちにとって「健やかに老いる」とはどういうことかを考える公開講座(福岡県医師会と西日本新聞社共催)が12日、福岡市中央区の都久志会館であった。103歳の教育学者として知られる福岡教育大名誉教授〓地(しょうち)三郎さんの講演に続き、患者の立場を代表する医師会モニター、医師会幹部、本紙連載「老いを支える 医の光景」(5―10日付朝刊)を取材した記者が、体が病み衰えても「健やか」に生きるためにはどうすればよいかを話し合った。

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  ▲シンポジウムのパネリスト▲

福岡県医師会モニター 田辺広さん(福岡県大牟田市)
同 石黒千代美さん(福岡市西区)
福岡県医師会副会長 池田俊彦さん
福岡県医師会常任理事 山内孝さん
西日本新聞報道センター 南陽子記者
※コーディネーター 田川大介・西日本新聞編集委員

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 ■分かりやすい説明で信頼を 身近な医師から情報得よう 患者会で手助けの輪広げる

 田川 自己紹介を兼ねて、自身の体験や日ごろ感じていることを話してください。

 田辺 昨年10月に大腸がん、今年2月には胃にがんが見つかった。医者からは「切れば直ります」と簡単に言われたがショックだった。ただ、早期に発見できて良かった。がん検診は大切だ。体の健康のほか、生きがいも大事にしている。人は生きがいをなくすと老化すると思う。

 石黒 17年前に出産した後、卵巣のう腫になり、手術が必要になった。最初の担当医は専門用語で説明し、理解できなかった。違う病院の医師に聞いたら分かりやすかったので、その医師に手術をしてもらうことにした。患者に安心、信頼を与えるには、医師が分かりやすく説明してくれるところから始まる。健やかに老いるために、私はおしゃれを楽しんでいる。くよくよせず、よく笑うようにしている。

  老いも病も避けては通れないが悲観することではない、ということを伝えたくて連載の取材を始めた。初回で紹介した排尿の問題は読者からの反響が大きかった。病院を何カ所回っても解決法が見つからなかったという声もあった。2回目に登場した訪問診療にあたる精神科医によると、認知症なのに医療機関に行かない患者も多いそうだ。自分にふさわしい医療にたどり着くために、どうすれば良いかは課題だ。

 田川 さまざまな取り組みがあるのに、必要な患者に情報が届いていない。どうすればいいか。

 山内 高齢者の場合は、行政が設置した在宅介護支援センターや地域包括支援センターがある。かかりつけ医に相談するのもいい。尿漏れなども、恥ずかしがらずに勇気を持ってほしい。専門の医師を紹介することもできる。

   ☆    ☆

 田川 自宅を訪問してくれる医師を見つけるには。

 山内 多くは口コミだと思うが、各地の医師会に連絡をしてもらえれば紹介できる。福岡県では、インターネットの環境があれば、メディカルセンターが運営する「ふくおか医療情報ネット」で探すこともできる。

 池田 身近な医師に相談することが大事だ。情報がはんらんするなか、自分に必要な情報が何かを判断するのは難しい。医師は専門だけでなく、さまざまな知識を持つように取り組んでいるが、最初からパーフェクトな医師はいない。患者が医師を育てるという面もある。

 田川 田辺さんと石黒さんは、がんの告知や医師のコミュニケーションのあり方について提起したが。

 池田 医師と患者には相性もある。がんの告知は難しい。あっさり言われる方がいい人もいるし、逆の人もいる。しっかりと説明ができ、患者が納得して聞けるように心掛けていきたい。

 田辺 患者も医師を信頼するよう努力したい。ただ、医療現場は忙しい。いつも時間を気にしながら相談していた。医師や看護師が余裕を持って医療に取り組める環境が必要だと思う。

 田川 医師の前では緊張してしまい、聞きたいことを忘れる人も多いようだ。聞きたいことを事前にメモしておくのもいい。

 池田 日本の医師は1人で多くの患者を診なければならない。制度にも問題があり、これから力を合わせて改善していかなければならない。

   ☆   ☆

 田川 会場の皆さんから集めた質問用紙に「物忘れ外来がもっとたくさんあるといいのに」とある。

 山内 認知症、物忘れは、本人より家族や友人が気づくことが多い。「物忘れ外来」と銘打っていない所でも相談はできる。福岡県の全医療機関を対象に「認知症、物忘れの相談に乗っているか」と聞いたところ、回答した約53%が「相談に乗っている」と答えた。必要に応じて専門の医師を紹介してくれる。

 田川 認知症と、加齢に伴う物忘れとを見分ける方法はあるのか。

 山内 テストがあり、一般の診療所でも受けることができる。一定の点数に達しないと認知症の疑いがあることになる。認知症は治らないというが、進行を遅らせる薬はある。規則正しい生活で(脳卒中などによって起きる)脳血管性の認知症を防ぐこともできる。

 田川 連載記事への反響では、おなかに穴を開けて栄養を送り込む胃瘻(いろう)への意見が多かった。

 山内 胃瘻手術は増えている。長期間にわたり管理がしやすい。ただ、栄養だけ送ればいいのかという批判もある。家族は悩んで手術を決めている。状態が回復すれば、再び口から食べることもできる。

 田川 健やかに老いるために、私たちがすべきことは。

  排尿の悩みを取材するなかで、治療を受けて回復した人が、病院を訪れた患者に自分の体験を伝える活動に出合った。こうした患者会、元患者会の取り組みは大切だと思う。必要な情報を提供する手助けの輪が広がっていけばいいと思う。

 田辺 がんを患ったが、知識がないと、おろおろするだけで不安になる。相談する人がいれば自分の悩みを聞いてもらえる。今は小康状態だが、患者の会があれば参加してみたい。病院任せ、行政任せではなく、必要を感じた人たちが自分たちでグループをつくるのもいい。

 石黒 20代で子宮がんになった人が「これから私、どうなるんだろう」とつぶやいたのを聞いたことがある。何でも相談できる所があればいい。“おせっかいおばさん”は減ってきたが、私もボランティアなどやってみたい。

 池田 同じ悩み、同じ問題を持つ人が一緒に会うのは良いことだ。患者会などで出た問題点を医療制度や保険制度に取り入れていくこともできるはずだ。

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 ■明るく、気力を持って 長生きの秘けつ講演 103歳の〓地三郎さん

 真っ赤なジャケットに身を包み、背筋を伸ばしてかくしゃくと舞台に現れた103歳の〓地三郎さんは、99歳から4年続けた世界一周講演旅行の成果や、日々取り組む健康法などをユーモアたっぷりに語った。

 子どものころは虚弱だったという〓地さん。「食事は1口30回かめ、と母に言われた。それを100年守ったから健康です」と胸を張った。(1)毎朝、冷水での乾布摩擦(2)背筋が曲がらないよう、固い布団に上を向いて寝る(3)韓国語やロシア語など外国語を勉強する-など実践する長寿のこつを紹介。関節の動きを良くして瞬発力をつけるという自ら考案した「棒体操」を率先して披露すると、600人の聴衆も立ち上がり、見よう見まねで従った。

 「何事も明るく、気力を持って取り組まなくちゃ」と討論の後には扇子を手に黒田節を舞い、晴れやかに公開講座を締めくくった。
 
※文中の〓は上が「日」下が「舛」

 

 

 

【写真説明1】医師会モニター 田辺広さん
【写真説明2】医師会モニター 石黒千代美さん
【写真説明3】福岡県医師会常任理事 山内孝さん
【写真説明4】福岡県医師会副会長 池田俊彦さん
【写真説明5】曻地三郎さんと一緒に、みんなで棒体操を楽しんだ
【写真説明6】「健康のためにはユーモアが大切」と語る曻地三郎さん

=2009/12/21付 西日本新聞朝刊=

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