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西日本新聞 医療・健康

九州の医療ニュース

CTと照射器が一体 トモセラピー がん放射線治療、より正確に 形状に合わせ強弱調整

[キーワード]医療情報

[更新日時]2009年02月16日

 がんの形状に合わせて、放射線を多方向から強弱をつけて照射することにより、がん細胞を破壊する強度変調放射線治療(IMRT)。なかでもコンピューター断層撮影装置(CT)と放射線照射装置が一体となり、より正確に放射線をがんに命中させる最新機器「トモセラピー」による治療が日本でも徐々に広がっている。どんな機器なのか。治療現場を訪ねた。 (田中直子)

 ■寝ているだけ

 福岡県久留米市の古賀病院21.放射線治療センターにあるトモセラピーは、一見するとCT装置を思わせる直径約2.5メートルのドーナツ形の機器だった。中央に寝台がついていて、男性患者(76)が腹部を出して横たわっていた。

 ドーナツ形の装置には照射口があり、これが360度回転することで、計51方向から、適切な線量で病巣部を目がけて放射線ビームを照射する。男性の治療は十分ほどで終わった。

 久留米市内に住むこの男性は昨年前立腺がんと診断され、1カ月前からこのセンターに通院している。九州では2台しかないトモセラピーによる放射線治療を受けるためだ。通院は週5日が原則。放射線照射は37、38回程度で、2カ月ほど通うことになる。週に2日を除いて病院に通う負担はあるものの、切らずに治療できるメリットは大きい。

 男性は「ただ寝そべっているだけで、痛みもなく楽ちん。病院にいる時間は準備を含めて20分ぐらいで、これで治療できているのか不思議なくらいです」と笑う。

 放射線治療特有の副作用はある。男性にも肛門(こうもん)痛、いわゆる痔(じ)の症状が出ているが、座薬を処方され「ほとんど痛みはなくなった」という。

 昨秋、トモセラピーの導入とともに開設した同センターでは、継続中を含めて、これまでに前立腺がんの患者33人が治療を受けている。北九州市や長崎県佐世保市などから通院してくる人もいるという。

 ■自動的に計算

 がん腫瘍(しゅよう)の形に合わせて放射線を当てるIMRTは、がんの周りの健康な臓器への放射線照射を極力避けることにより体への悪影響が少ない治療法として普及が進んでおり、特に前立腺がんなどに適用されている。

 トモセラピーはIMRTの一種である画像誘導放射線治療(IGRT)をする装置である。体内を画像診断するCTと、放射線照射装置が一体となっているのが特徴だ。

 治療に先立ち、まずCTで患者の体を撮影し、画像に基づき放射線の強弱やあてる角度を自動的に計算する。実際の治療が始まると、照射のたびにCTを撮り、がんの位置を確認、正しい位置に放射線をあてる。

 従来のIMRTは、CTと放射線照射装置が別になっており、あらかじめCTで撮影したがんの画像を基に、放射線照射の方向や量を医師や技師が照射装置に入力して行う。同センター長の大曲淳一医師は「作業が煩雑なため多くの患者に対応できていないのが現状」と指摘する。

 特に、直腸近くにある前立腺がんでは、直腸へのガスのたまり具合などで、前立腺が日によって1センチ近くずれるという。そのため、照射のたびに自動的に前立腺のずれを把握できるIGRTが重宝される。

 ■副作用を軽く

 「副作用を軽減できるのも特徴」と大曲医師はいう。くだんの男性患者のように肛門痛や頻尿の症状は多いが、従来の放射線治療に比べると軽い。同センターの患者では、従来頻繁に起こっていた直腸の出血なども減少したという。

 国立がんセンター(東京)によると、前立腺がんによる死亡者は2007年には9800人と増加傾向にある。今後10年で、肺がんに次いで男性のがん死亡率の2位になると予測されている。特に60歳以上の男性の罹患(りかん)率が高く、体にメスを入れない放射線治療への期待は高まると予想される。

 米国製のトモセラピーは世界で約200施設が導入している。日本では2005年に初めて導入され、現在は古賀病院21.放射線治療センターを含む12施設にあり、前立腺がん以外にも活用されている。

 治療には保険が適用されるが、機器1台が数億円と高額なため、普及の道のりは険しい。

【写真説明1】CTと放射線装置が一体化したトモセラピー=福岡県久留米市の古賀病院21
【写真説明2】トモセラピーでの治療の様子

=2009/02/16付 西日本新聞朝刊=