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過酷環境、改善進む 福島第1原発事故に派遣 産業医科大・鈴木医師が報告

[キーワード]医療情報

[更新日時]2012年01月23日

 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故の収束作業に現地で取り組む作業員たちの健康を支えようと、北九州市の産業医科大学が昨年5月から医師たちの派遣を続けている。感染症制御が専門の同大助教の鈴木克典医師(38)は派遣要員の一人で、何度も現地に出向いている。作業員たちを取り巻く環境や健康状態はどうだったのか。鈴木医師に聞いた。 

 ●疲労と熱中症

 最初に派遣されたのは昨年5月だったが、現場はなお緊迫感に包まれていた。極度の緊張と疲労から風邪や下痢に苦しむ作業員たちがおり、治療に当たった。作業員たちは全身を包む防護服や全面マスクを装着していた。夏場の熱中症対策もすぐに考える必要があった。

 熱中症対策としては(1)保冷剤を入れた「クールベスト」と呼ばれる体温上昇防止服を防護服の下に着てもらう(2)水や塩あめを十分に補給してもらう-などを実施した。

 私たち産医大の医師たちが、昨年の5月から7月まで拠点としたのは、第1原発敷地内にある免震重要棟(2階建て)の医務室。免震重要棟は1号機から約200メートルしか離れていない場所にあり、東京電力の対策本部が設けられていた。まさに事故対応の最前線。当時、東電社員を含め作業員たち約200人が、廊下などに雑魚寝して休んでいた。防護服のまま階段で仮眠する作業員も少なくなかった。

 医務室には当初、放射線量を測るサーベイメーターや聴診器ぐらいしか医療機器はなく、私たち医師はまず強心剤を東電に要求した。同原発から約20キロ離れた復旧対応拠点の「Jヴィレッジ」までは地震で路面が悪化しており、車で50分はかかる。もし心肺停止状態の患者が出たとき、Jヴィレッジまで運ぶ間の蘇生措置に強心剤が欠かせない。

 ●リフレッシュ

 私は昨年7月までは毎月1回、その後は2カ月に1回のペースで、現地に出向いている。産医大は放射線の影響を考慮し、私たち医師の派遣について1回当たりの滞在時間を48―72時間に限っている。私の線量計は同5月に130マイクロシーベルトを記録したが、健康には問題ないレベルと考えられる。作業員たちからも被ばくの不安は聞かれない。

 作業員の勤務態勢は昨年6月ごろまでは、長い人で7日連続働いて1日か2日休みというものだった。勤務の日は昼も夜もぶっ通しで働いており、現地での気分転換の方法はラジオ体操ぐらい。休日は現地から離れてリフレッシュするよう勧めていた。

 作業員の精神状態も気掛かりだった。しかし、東北人の我慢強い気質から、過酷な環境でも心の内を表情や口に出さない人が多く、精神状態がどうなっているのか把握が難しかった。

 ただ作業環境が落ち着いてきたためか、昨年11月下旬には、作業員の一人が「今後のことや家族のことが心配だ」と、これまで聞かせてもらえなかった気持ちを打ち明けてくれた。さらに信頼関係を築き、本音を語ってもらえるようにしていきたい。

 ●食事や睡眠も

 食事は昨年の5月から夏までは、作業員たちも私たち医師も、だいたいがレトルト食品かパン。発熱剤で湯を沸かしてパックのご飯やレトルトカレーを温めた。同9月から弁当が配られるようになり、Jヴィレッジにプレハブの食堂も開設された。

 作業員たちの睡眠環境も改善された。免震重要棟や福島第2原発体育館で雑魚寝だったのが、同館に2段ベッドが導入され、昨年6月末からはJヴィレッジに建設された冷暖房付き4畳の個室の寮(1600室)を利用できるようになった。ただ、第1原発は同11月下旬の段階でも水道が使えず、シャワーの代わりにウエットティッシュで体を拭くしかなかった。

 第1原発では同12月、50人以上の作業員がノロウイルスが原因とみられる食中毒症状を訴えた。当初から抗ウイルスせっけんやアルコール消毒液を配備し、感染症対策には力を入れてきたが、全員に浸透させるのは難しいということだ。インフルエンザも警戒が必要で、あの食中毒をきっかけに作業員たちが意識を変えてくれることを願う。(談)

 【メモ】産業医科大学は産業保健を担う全国唯一の医大として国から要請を受け、今回の医師派遣に取り組んでいる。派遣は1回当たり2人1組で行っており、昨年5―12月末に延べ102人の医師を派遣した。現在は全国の労災病院から派遣された医師とともにJヴィレッジに詰めて、作業員の健康診断などに当たっている。必要に応じて福島第1や第2原発にも出向く。派遣は今年3月末まで実施することが決まっている。

=2012/01/23付 西日本新聞朝刊=

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