
愛煙家で、さらに愛妻家の男性にとって衝撃的な論文がある。
厚生労働省の研究班が2008年、受動喫煙と肺がんの関係について研究結果を発表した。40―69歳のたばこを吸わない既婚女性約2万8千人を対象とした約13年にわたる調査である。
その分析によると、たばこを吸う夫の妻は、たばこを吸わない夫の妻より肺腺がん(肺がん)になる確率が2倍以上高かった。研究班は「肺腺がんになった妻の37%は、夫からの受動喫煙が原因とみられる」と推計している。
受動喫煙は肺がんのほか心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などのリスクもあるとされ、たばこの先から出る副流煙は、喫煙者が吸い込む主流煙より、アンモニアや一酸化炭素、発がん性のベンゾピレンなどの有害な化学物質が多く含まれているという報告もある。

産業医科大学健康開発科学研究室の大和(やまと)浩教授は「飲食店での喫煙に特に注意を払うべきだ」と警告する。
大和教授の研究室が、自由に喫煙できる居酒屋でたばこから発生する粉じん濃度を計測したところ、最高値は1立方メートル当たり2700マイクログラムだった。世界保健機関(WHO)が人体に影響がないと認めた基準値(同25マイクログラム)の100倍を超えた。
「飲食店の従業員は、高い濃度のたばこの煙を吸っていることになる。全面禁煙でなければ利用者と従業員の健康を守れない」と大和教授は言う。
スコットランドなどの海外では屋内での喫煙を全面禁止する法律が施行された結果、心筋梗塞の患者が減少したとのデータもあるという。
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10月にはたばこ増税が実施され、どの銘柄も一箱100円程度値上がりする。大手製薬会社の調査では、増税を機に禁煙したいと考える人が推計で1千万人以上いるという。今回の厚労省の通知により、喫煙場所が減れば、たばこ離れが加速する可能性もある。
ただ、アメリカのオバマ大統領も何度も禁煙に失敗するなど、中毒症から抜け出すのは難しい。でも大切な人を煙から遠ざけたいと心から思うことは、しっかりとした動機づけになるだろう。
福岡市中央区の男性会社員(43)は4年前に長女を授かった。待ちに待った子どもだけに喜びもひとしおだった。泣き声を上げるまな娘を見て男性は、自分の吸うたばこの害が気になった。この機会にやめることができればと、福岡市健康づくりセンターあいれふ(中央区)の禁煙教室を受講した。
二十歳から吸い続けてきただけに、禁煙の初日から「吸いたい、吸いたい…」と頭の中でめぐったが、そのたびに深呼吸して水を飲み、娘の顔を思い浮かべた。3年が経過したが禁煙は続いている。「たばこは今も大好きだと思うし、いつか吸うかもしれない。そんな気楽な気持ちと娘の笑顔が長続きの秘訣(ひけつ)だと思います」と話してくれた。
意思だけではやめられない人には医療の手助けもある。「禁煙外来」がある診療所や病院では、医師や保健師が指導し、禁煙補助薬として飲み薬やパッチを処方してくれる。喫煙歴など一定の条件を満たせば2006年から保険も適用される。例えば飲み薬による治療の場合、診察を含めた3カ月間の治療費の自己負担は2万円弱という。
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映画やテレビドラマ化され、大ヒットした「ROOKIES(ルーキーズ)」などの作品で知られる漫画家、森田まさのり氏。禁煙に取り組み、週刊誌に連載中の漫画の欄外に達成記録を記すのが恒例になっている。
「☆禁煙始めて5710日!!」(週刊ヤングジャンプ3月25日号)。連載をこつこつと続けるように、禁煙にも積み重ねと辛抱強さが大事なようである。
【写真説明1】広がるたばこの煙。その害を受けるのは喫煙者本人だけではない
【写真説明2】大和 浩教授
=2010/03/22付 西日本新聞朝刊=




