◆自覚症状現れず

「CKDは、いわば人工透析予備軍。脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの心血管障害の発症率、死亡率を高めるという研究結果も出ており、発症要因のひとつとなるメタボリック症候群(内臓脂肪型肥満)と合わせて注意が必要です」。福岡大学医学部の斉藤喬雄教授(腎臓・膠原(こうげん)病内科学)は警鐘を鳴らす。
腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄(はいせつ)する▽血液中の水分や塩分のバランスを保つ▽血圧を適切にコントロールする-などの働きをする。機能が低下すればむくみや血尿が出ることがあるが、腎疾患の自覚症状は「末期的な状態で初めて出現することもある」(斉藤教授)。実際、このようになってから専門医にかかり、すぐに人工透析が必要になることもまれではないという。
◆透析患者28万人

国内の慢性透析患者は昨年末時点で27万5000人を超え、年々増え続けている。では、どうすれば早期発見や予防につなげられるのか-という観点も含め、2002年から米国で提唱されたのがCKDの概念だ。
日本腎臓学会のCKD診療ガイドでは(1)尿タンパクなどで分かる腎障害(2)腎臓の機能を示す「糸球体ろ過量(GFR)」が一分あたり60ミリリットル未満-のうち、どちらかが3カ月以上続く状態と定義される。腎炎や糖尿病といった腎障害の「原因」は問わず、専門医でなくても尿や血液の検査で判断できる基準を設定。かかりつけ医の段階で患者を拾い上げ、注意喚起して病状の進行を食い止めるようとする取り組みでもある。
同学会によると、国内のCKD患者は推計約1330万人。うち治療が必要な患者は約590万人とされるが、多くは治療を受けないままとみられている。
◆認識甘く放置も

日本慢性腎臓病対策協議会(東京)が昨年、20歳以上の1000人を対象にしたインターネット調査では「過去に健康診断などで尿タンパクなどの異常が出たことがある」とした人は3割。このうち再検査を受けた人は半数にとどまった。再検査をしない理由は「大した異常だと思わない」48.6%、「わずらわしい」17.1%。協議会は「一般社会の腎臓病に対する意識の低さを浮き彫りにしている」と分析した。
一方、協議会は国内の医師205人を対象にCKDの認知度調査も実施した。「名前を知っている」は全体で6割にとどまり、内科や泌尿器科などCKD患者と接する機会の多い診療科の医師でも7割弱。定義や原因、治療法まで理解している医師は3割に満たないという実情も浮かんだ。
◆重症化防ぐには
斉藤教授は「透析患者や心血管障害に苦しめられる患者を減らすためにも、CKDへの理解を広めるとともに腎臓専門医と一般の医師が連携して診療に当たるシステム構築が急務」と訴える。
このシステムは、かかりつけ医の段階でCKDを発見して腎臓専門医に紹介▽専門医が治療方針を定めた後、日常的な投薬や生活指導は再び、かかりつけ医に任せる-という仕組み。厚生労働省も、今年から、重症化予防のための全国的な研究に着手した。
日常生活の留意点について、斉藤教授は「糖尿病や高血圧とともに肥満や高脂血症、喫煙も腎障害悪化の大きな要因で、メタボ対策はCKD予防にとっても大きなポイント」と指摘。また、尿タンパクに異常が見つかった場合は放置せず、医師に相談するよう呼び掛けている。
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●抑制へ全国研究医師連携も検証 厚労省が4年計画
厚生労働省は本年度、透析患者の増加抑制を目指し、慢性腎臓病(CKD)重症化予防のための全国規模の研究に着手した。2012年までの4年間、日本腎臓学会による診療ガイドに沿った治療や生活指導を実施し、4年後の透析導入患者数を予測数値よりも15%減少させることを目標とする。専門医とかかりつけ医との連携の在り方についても検証する方針。
研究では、長崎大や熊本大など全国15都県の大学病院が幹事施設となり、近隣の計約50地区の医師会の開業医500人が参加。40歳以上75歳未満のCKD患者約2500人を登録し、診療ガイドに基づく投薬や食事療法などを行う。
患者は医師会ごとに2グループに分かれ、片方のグループは、かかりつけ医のもとで管理栄養士による生活指導、食事指導などを受け、診療ガイドの治療指針が徹底されているか随時チェック。こうしたかかわりによって、腎臓専門医(大学病院)との連携にも差が出るのかどうか、腎機能の予後にどんな影響を与えるのかを観察。最終的な透析患者数などを評価するという。研究班は「世界でも類をみない腎機能悪化予防のための研究。腎臓病治療に役立つことが期待される」としている。
【写真説明1】斉藤喬雄教授
【写真説明2】国内の慢性透析患者数
【写真説明3】慢性腎臓病(CKD)の病期
=2008/11/3付 西日本新聞朝刊=




