■刺すような痛み
「長時間歩いた日は、びりびりっと刺すような痛みが走ります」。福岡市近郊に住む主婦(58)は、約3カ月前に左股関節に異常を感じ、変形性股関節症と診断された。
主婦は、臼蓋(きゅうがい)と呼ばれる、大腿(だいたい)骨の“屋根”部分のくぼみが生まれつき浅い。体重を支える面積が狭いため、年齢を重ねたことで関節のすき間を埋める軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになった。
変形性股関節症は、立つ、歩く、座るなどの基本動作に激しい痛みを伴う。多くは中高年で発症するため「関節の老化」とのイメージを持たれがちだが、日本人の場合、この主婦のように生まれつきの臼蓋形成不全や股関節脱臼に基づくものが原因の大部分という。患者が増えた背景として、肥満による関節への負担増や、いすや洋式トイレが一般的になり「しゃがむ」動作が減ったこととの関連を指摘する専門家もいる。
■寝返り痛が信号

変形性股関節症を発症すると軟骨の一部がすり減ってくるが、軟骨には神経がないため痛みが軽く、発見は遅れがちになる。福岡和白病院(福岡市東区)の林和生リウマチ・関節症センター長(54)は日常生活で確認できる症状のチェック表をつくった。
症状の現れ方はさまざまだが、林医師は「寝返りをして痛みが出るようなら要注意」という。「無理して我慢すれば椎間板(ついかんばん)ヘルニアやひざ痛を併発する恐れもある」と注意を呼び掛ける。
早期の発見・治療が大切だが、症状の進行を防ぎ、予防にも役立つ運動療法にきちんと取り組む整形外科は多くはない。林医師は「病院に行っても『手術が必要になったら来てください』と言われ、鎮痛剤の処方しかされなかった、と多くの患者から聞く」と嘆く。
林医師は、ひざ・股関節専門として24年の実績を持つ、ゆうき指圧整体院(大阪市住吉区)の大谷内(おおやち)輝夫院長(54)との共同研究を昨年夏に開始した。大谷内氏の治療院で8割の患者に症状の改善がみられたという独自の運動療法を取り入れている。
■高齢者にも効果

従来の運動療法は、硬くなって動きの悪くなった関節はそのままにして筋力を鍛えようとする。一方、林医師らが用いる運動療法は、まずこの関節のこわばりをほぐしてから股関節の動きに必要な筋肉を鍛えることで、関節の動きや荷重の位置を正常に戻すことを基本にしている。自宅などで患者自身が簡単に行える。林医師は「高齢者でも筋力や柔軟性の改善はゼロではない。毎日根気強く続ければ、手術の時期を遅らせたり、場合によっては回避もできる」という。
もちろん症状が進めば運動療法でも効果は望めず、人工関節に置き換えるなどの手術が必要になる。林医師は、運動療法を選択するにあたって「15分歩けるかどうか」を大まかな目安にする。「手術は最終手段。軽症なら運動療法を試してほしい」と話している。
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●股関節痛に効く運動の例

【足の横上げ】
痛む方の足を上に横向きに寝る。
上の足を肩幅の高さまで上げ、前に5ー10度移動。
そのままくるぶしの下に座布団などを置き、かかとを前に15秒突き出す。1日20回。

【お尻の筋力強化】
うつぶせになり、両足を伸ばす。
片足を腰が浮かない程度に持ち上げ、5秒静止。
1日に左右10回ずつ。

【太もも前部の強化】
あおむけに寝る。
左右のかかとを突き出し、つま先を反らせてひざを伸ばし、10秒静止。
1日40回。

【8の字柔軟】
あおむけに寝て、片方の足を曲げてひざを床から約10センチ浮かせる。
その足のかかとで縦、横方向に「8」の字を描くように15回ずつ動かす。
逆の足も同様。
=2008/06/29付 西日本新聞朝刊=




