▼日中は裸眼で

遠くのものが見えづらい近視。カメラの構造に例えれば、レンズの役割をする角膜(黒目部分を覆う透明な膜)と眼球内の水晶体を通るときに屈折した光が、フィルムとなる網膜(像を結ぶ眼球の内側の膜)に届く手前でピントが合ってしまい、ぼやけて見える現象と同じだ。
近視は、(1)角膜のカーブが強くなり、光の屈折が大きくなる(2)眼球の前後の長さ(角膜から網膜までの長さ)の異常により、焦点がずれる-ために起きるとされている。
オルソケラトロジーは、角膜に特殊なハードコンタクトレンズを着け、角膜のカーブを矯正することで、視力の回復を図る。5年前から導入している実吉眼科医院(福岡県久留米市)の実吉安英院長は、このレンズを「目に着けるコルセットのようなもの」と説明する。
レンズを着けるのは睡眠時。個人差もあるが、6時間程度の装着で、翌日の日中(十数時間程度)は裸眼で過ごせるほど回復するという。
▼翌朝には効果
裸眼視力が右0.08、左0.1の記者も、同医院でオルソケラトロジーレンズを試してみた。
まずは事前の適応検査。近視や乱視の度合いの検査は、通常の視力検査と同じ。加えて、眼球の硬さ(眼圧)や角膜の形状などを測る。実吉院長によると「乱視の強い人は適さず、使用できない場合もある。近視の度数が強い人にも効果がない」という。
検査結果を基に、200種類以上ある中から適したレンズが選ばれ、保管や着け外し時の注意点の説明を受けた。
その夜、レンズを着けて眠ってみた。寝ているためか、ハードレンズ特有の異物感は感じず、レンズが離脱することもなかった。翌朝、レンズを外すと、これまでは裸眼では見づらかったテレビの小さな字幕がはっきりと見えた。
さらに就寝時のレンズ装着を続け、3日後に再び裸眼視力を測ると、右1.0、左1.2にまで回復。週末のテニスも裸眼でプレーできた。
日中は裸眼で活動できるオルソケラトロジーは、体を激しく動かしたり、水中スポーツしたりする人に特に向いているという。同医院を訪れた福岡市の男性(42)は「趣味の温泉でも便利そう。最近広がっているレーザー手術よりも気軽にできそうだから」と話した。
▼使用は慎重に

さらに、オルソケラトロジーレンズの長所として、「着用により近視の進行を抑えることもできる」と実吉院長は説明する。ただし、老眼や遠視に効果はない。レンズの耐用年数は普通のハードコンタクトレンズと同じくらいの3年程度というが、保険は適用されず費用は各医院で異なる。実吉眼科医院の場合は約15万円という。
一方で、レンズの日本での製造販売は未認可だ。日本でこの近視矯正法を導入している眼科では、米食品医薬品局(FDA)の認可を受けている米国製レンズなどを、患者に貸与する形を取っている。厚生労働省医療機器審査管理室は「効果や安全性などは医師と患者の判断」とする。同室には現在、治験を終え、レンズを認可申請中の企業もあるという。
「ライフスタイルなどを考えて、専門医に総合的な診療を受けて、よく相談してから使用を決めてほしい」と助言するのは、同市の久留米大医学部眼科学講座講師の門田遊医師。門田医師によると、オルソケラトロジーレンズのメリットは大きい一方で、まばたきをしない就寝中は、目の表面が十分に潤わず、角膜炎などになるリスクもあるという。そのためレンズの十分な洗浄と管理が重要となる。門田医師は「使用中に目の異常があれば、すぐに受診を」と話している。
実吉眼科医院=0942(37)3111。ホームページ=http://www.scl-eye.com
【写真説明1】眼球の構造とオルソケラトロジーの仕組み
【写真説明2】実吉眼科医院以外でオルソケラトロジーによる近視矯正を行っている九州・山口の主な眼科
=2008/06/16付 西日本新聞朝刊=




