■100人に2-3人
医学的な低身長は、同性同年齢の標準身長に対し「マイナス2標準偏差(SD)」以下と定義される。「2SD」は、標準値を挟んだ「プラス2SD」と「マイナス2SD」の間に全体の約95%が入る数値。「マイナス2SD」以下には2-3%が含まれる。つまり100人中、背が低い方から2-3番目までが低身長となるわけだ。
ちなみに出生時の「マイナス2SD」は男児44.7センチ(平均49.0センチ)、女児44.2センチ(同48.4センチ)。17歳11カ月は男子159.1センチ(同170.8センチ)、女子147.6センチ(同158.1センチ)となっている。
低身長の代表的な原因は成長ホルモンの不足や欠乏だ。低身長児の1-2割を占め、2-3歳から低身長が目立つ。

この場合は成長ホルモン製剤を注射して、成長ホルモンの不足分を補う治療が施される。注射は毎日、家族や本人がお尻などに打たねばならないが「注射針は非常に細くて短く、慣れれば恐怖感はなくなる」と熊本市民病院(同市湖東1丁目)小児科の中村俊郎部長は話す。
■QOLに影響も
成長ホルモン治療はいつ始めても効くわけではない。思春期に身長の伸びをもたらすのは性ホルモンの働きだが、その伸び幅は男子25-30センチ、女子20-25センチ程度。それを過ぎると、骨が成熟し、成長ホルモンを投与しても伸びる余地がなくなるのだ。
「思春期開始時の身長で最終的な身長はほぼ決まる。それまでにどれだけ身長を稼げるかが重要」と中村部長は話す。
では、思春期以後の成長ホルモン治療は無駄かというと、そうではない。成長ホルモンの働きは身長を伸ばすだけではない。体内で生涯分泌され、タンパク質や脂質などの代謝に重要な役割を果たす。不足すれば、疲れやすく、スタミナや集中力、気力が低下し、うつ状態を招く場合もある。また、皮膚が乾燥したり、体脂肪が増加したりもするという。
「成長ホルモンは生涯に渡り、QOL(生活の質)に影響する」(中村部長)のだ。
■早合点しないで

低身長の原因は成長ホルモンだけではない。成長に関係する甲状腺ホルモンや性ホルモンの異常のほか、脳に腫瘍(しゅよう)が隠れていたり、骨に病気があったり、染色体異常の場合もあり、その種類は200以上あるという。
また、いじめや虐待など長期にわたる強いストレスが成長ホルモンの分泌を低下させることもある。
身長が正常範囲だからといって安心はできない。ある時点から急に成長率が低下したり、逆にまだ10代になっていないのに急激に成長率が増加したりするのも要注意だ。
実際には、低身長児の半数以上は病的な原因がない「特発性」と呼ばれる低身長で、この場合は治療の対象とはならない。だがこれまで述べたように、低身長には一生を左右する病気が潜んでいる可能性がある。
特に女児の場合は「女の子だから」と見逃されることが多い。ある製薬会社が成長ホルモン治療を受けている約1万人を調べたところ、男女比は2対1で、女児が圧倒的に少なかったという。
中村部長は「『生まれつき』などと早合点は禁物。幼いころから保護者が子どもの成長を注意深く見守ることが大切」と語った。
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異常の早期発見には、身長の推移をグラフ化した「成長曲線」を付けることが大切。何らかの異常があれば曲線は不自然な軌跡をたどる。インターネットで「成長曲線」で検索すると、製薬会社のウェブサイトなどに標準偏差を計算してくれるソフトもある。
取材後、娘の母子手帳や幼稚園の健診記録を引っ張りだし、インターネット上で調べてみた。結果、娘の身長はずっと「マイナス2SD」以下で推移していた。早速、専門医に検査の予約を入れた。
【写真説明1】中村俊郎部長
【写真説明2】低身長症の主な原因
=2008/03/31付 西日本新聞朝刊=




