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足の閉塞性動脈硬化症

[キーワード]循環器科

[更新日時]2007年11月05日

 ■徐々にしびれや痛み 重症化すれば切断も

 脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などと同様、動脈硬化が原因で発症する病気に「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」がある。足の動脈が狭くなったり、詰まったりして血流が悪化し、ふくらはぎなどにしびれや痛みを感じる症状のほか、重症化すれば足が壊死(えし)し、切断に至ることもある。命にもかかわり、異常に気付いた場合は素早い対応が必要だ。 (田中伸幸)

 ■高血圧や糖尿病に注意を

 九州大学病院(福岡市)第二外科の伊東啓行講師(血管外科)によると、硬化症は原因不明の炎症、バージャー病とともに「慢性動脈閉塞症」の一種。足の動脈が徐々に狭まり血流が悪くなった結果、発症する。

 硬化症の初期段階の患者は50代から目立ち始め、足が冷たいと感じたり、しびれたりする症状が出る。坂道や階段を歩いていてふくらはぎや尻に痛みを感じるものの、立ち止まって少し休むとまた歩けることもある。

 こんな症状を感じた場合、伊東講師は「まず動脈硬化の要因となる高血圧や糖尿病などに注意するよう生活を見直すことが必要。たばこを吸っている人は禁煙が最も重要」と助言する。

 回復に向けては、1時間程度の歩行を繰り返す運動療法や薬物療法が効果的という。

   ■   ■

 症状が重くなると、じっとしていても足に痛みを感じるようになる。さらに悪化すれば、筋肉の委縮が進み足先が壊死することも。放置すれば足を失いかねない。

 このような状態は「重症虚血肢」といわれ、発症5年後の死亡率は乳がんや大腸がんを上回る44%。足を切断しなければならなかった患者の死亡率も高く、切断後2年で追加治療が不要な患者が40%いた一方、死亡した患者も30%とのデータもあるという。

 重症虚血肢の患者には血流を改善する血行再建術がなされ、その方法としては、針金を通すなどして血管を広げる「血管内(カテーテル)治療」と人工血管や静脈を活用する「動脈バイパス術」がある。

 術後に再び血管が狭くなることはあるが、バイパス手術を行った場合、その確率は5年後でも約2割と低く、治療成績は高い。

 ■九大病院、遺伝子治療に着手

 ただし、血行再建術も万能ではない。「動脈硬化が進んで石灰化したような患者さんには難しい」(伊東講師)からだ。

 そこで血管の再生が技術的に困難な患者を対象に、九大病院が昨年から取り組んでいるのが、血管のない部分に新しい血管を作り出す遺伝子治療「血管新生療法」だ。

 この療法は、血管構築作用のあるタンパク質を作る遺伝子を、足の筋肉内に注射する。遺伝子は国内で開発された「センダイウイルスベクター(遺伝子の運び役)」に組み込まれた状態で、患部に注射される。

 同ベクターに遺伝子を組み込む研究を1999年から続けている九大医学研究院の米満吉和特任教授(遺伝子治療学)は「類似の臨床研究はあるが、九大の研究は遺伝子を細胞内に取り込む効率が50倍以上で、安全性も高い」と強調する。

 九大病院は昨年夏から、重症虚血肢患者の足にベクターを注射する臨床研究も行っている。安全性に考慮し、最初の患者3人には最も効果が表れると想定したベクター量の百分の一を投与した。

 このうち右足に痛みがあり、左足に比べて右足の温度が五度ほど低かった60代の男性は、投与から1カ月後、治療前に見られなかった新しい血管が確認された。半年後には、治療前の倍の130メートルほど歩けるまで回復し、副作用も生じていないという。

 一方、他の2人については、痛みが一時的になくなるなどの改善もあったが、病気の進行を食い止められず足や足の指を切断した。伊東講師は「現在の投与量ではバイパス手術に匹敵する効果は得られておらず、まだ夢の治療法とはいえない。しかし、可能性はある」と説明する。

 九大は今後も、新たに9人の患者に対し、ベクター量を段階的に増やしながら投与する臨床研究に取り組むとしている。

【写真説明1】九州大学・伊東啓行講師
【写真説明2】遺伝子注入による血管新生療法
【写真説明3】九州大学・米満吉和特任教授


=2007/11/05付 西日本新聞朝刊=

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