
●「息み方」感覚をつかむ
若いころから便秘気味だった71歳のA子さん。殊に近年は、激しい便意に襲われても排泄(はいせつ)できず、肛門の周囲を指で押して刺激したり、それでも出てこない時は指を入れて掻(か)き出したりしていた。便秘薬をのむと一転して下痢をした。
大腸肛門病センターくるめ病院(福岡県久留米市新合川2丁目)の診察は、便秘のタイプを見極める検査から始まった。

小さな錠剤のようなマーカーを3日続けて20個ずつのみ、その翌日、3日分のマーカーが腸のどの位置にあるかをエックス線で調べた。A子さんの場合、初日と2日目のマーカーのほとんどが大腸を通過して直腸に集まっていた。
「大腸の運動能力は問題ありません。肛門の機能障害によって排泄が困難になる直腸性便秘と考えられます」と荒木靖三(やすみ)院長。便秘薬をのむと下痢をするのは「正常な大腸が薬で刺激されて、動きが活発になり過ぎるから」との説明だった。
次に、なぜ出すことができないかを詳しく調べた。お尻からバリウムを200CC入れ、排便する様子をエックス線で撮影する排便造影である。
直腸や肛門の動きが記録された映像を見て、A子さんは驚いた。自分では息んで出そうとしているのに、意に反して肛門が締まっている。排便後も、バリウムの半分ほどは直腸に残っていた。
荒木院長は「肛門を締めて、便を切りながら出すのが癖になっていますね。これは恥骨直腸筋や外肛門括約筋の奇異収縮によるもので、協調障害といわれるものです」と診断した。
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あまり知られていないが、直腸性便秘に苦しむ人は意外に多い。くるめ病院を昨年1年間に受診した便秘患者562人中、19.2%にあたる108人が直腸性だった。そのうち70人(64.8%)は協調障害だった。
荒木院長は「便秘薬をのんで便を軟らかくすると出せるものの、残便感があり、トイレに10分以上かかる人は可能性がある」という。
女性の場合やっかいなのは、息むことによって直腸がポケットのように膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)を招きやすいことだ。また、直腸の上部が下部に覆いかぶさる不顕性直腸脱は男女とも併発する恐れがある。こうした病気が加わると、便はますます出なくなる。
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くるめ病院が取り組む直腸性便秘の治療は、肛門を緩めるこつを訓練するバイオフィードバック(生体自己制御)療法というものだ。
ベッドに横になったA子さんのお尻に、肛門の圧力を測る直径五ミリほどの管状センサーが挿入された。
「お尻をぎゅっと締めてください」。看護師が促すと、心電図のようなモニターのグラフが急上昇した。「それでは排便するように息んでください」。本来は陰圧にならなければならないのに、A子さんのグラフはまたも急上昇した。
お尻の筋肉をどのように動かせば、グラフは下降するのか。モニターを見ながら感覚をつかんでもらうのがこの療法だ。50CCの空気や水を入れた風船を便に見立てて、出す訓練もする。
A子さんの場合、2週間に1度、計3回の訓練で症状が改善。荒木院長によると、期間の長短はあるものの、手術が必要な直腸瘤などを除く7-8割の患者は、この療法で快便生活を取り戻せるという。
(図・写真=(上)エックス線撮影室で便器に腰掛けて行う排便造影検査の様子(くるめ病院提供)、(中)直腸瘤を伴う直腸性便秘、(下)慢性便秘の主なタイプ)





