●1916年に初報告

足裏を刺激して、健康増進を図るという発想は古代エジプトや4000年前の中国にもあったが、体系立てたのは欧米の医師といわれる。1916年、米国のフィッツゲラルド博士が外科手術の後に、手術いすのひじ掛けの角に手足の腹を押し付けて痛みをこらえている患者を発見。「人体のある部位を刺激すると、離れた他の部位にも効果が及ぶ」との研究報告を行ったのが最初とされる。
その後、30年代に同じく米国人女性のイングハイム氏が「足は語る」を著し、さらにドイツのサナトリウムで働いていたマルカート氏が75年、現在の反射区療法の基礎となる「足の反射療法」を出版した。こうした足裏の研究が欧米で発達した背景には「終日、靴を履く慣習があったからではないか」と向野教授はみている。

反射区療法の基本的な考え方は、足裏の各ポイントを刺激することで、関連する臓器や体の部位の不具合を正そうとするものだ。ここから足裏と人体の各部を結ぶ「足裏反射区マップ」が作られた=イラスト参照。
向野教授によると、首と足の親指に痛みを訴えた女性患者(63)の足の親指に鍼(はり)治療を行ったところ、痛みが同時に消滅。肩凝りや便秘の解消、月経痛の軽減などにも効能が認められるという。
足裏の反射区療法は、ストレスケアの一手法として産婦人科や歯科医院などでも取り入れるところがある。福岡県内のある産婦人科医院では、出産後のアフターケアとして行っており「出産後の全身の痛みが和らぎ、精神的にも落ち着くと好評」という。
ただし、あん摩マッサージ指圧師と違い、足裏反射区療法には国家資格はない。足の裏に鍼を打つ治療は、国家資格を持った鍼灸師でないと行えないため、多くのエステ店などは民間資格の取得者が施術しているとみられる。向野教授は「足の裏を手で刺激するだけであれば体に悪いことはない。だが、あくまでストレスの解消の療法と考えた方がいい」と話す。
●「古代の治療」
一方、全身のツボが耳にもあるとして、耳を刺激する治療は1957年、仏のポール・ノジェ博士が始めたとされる。整形外科医の博士は女性患者の耳に2ミリ四方のやけどのあとを見つけ、女性に尋ねると「地中海に伝わる古代からの座骨神経の治療あと」と教えられたそうだ。
耳を刺激し、関節痛や腰痛の治療に用いたことは、医学の祖とされる古代ギリシャのヒポクラテス(紀元前460-同377)の著書にもあるという。
ノジェ博士は、女性患者との会話がきっかけになって耳に全身のツボがあることを発見、各部位の痛みの治療に耳のツボが使われるようになったとされる。
今、国内では耳ツボダイエットがはやっている。痩身(そうしん)はともかく、国家資格をもつ鍼灸療院の多くは、不眠症や便秘、不定愁訴などの改善策として施術しているようだ。
●韓国から提唱
手のひらや指も、耳や足裏と同じように全身の縮図となっているとの考えは1971年、韓国の柳泰佑(ユーテウ)博士が提唱した。
柳博士によると、指は頭や手足、手のひらは体の前面、甲は背面になり、指先は顔面・頭部となる。柳博士は全身の治療のため、指や手のひら、甲に鍼を刺す療法を「高麗手指鍼(しゅししん)」と名付け、普及に取り組んでいる。かつては鍼治療がメーンだったが、今は手による刺激での治療も多くなっているという。
これらの療法について向野教授は「病気と投薬の因果関係がはっきりしている西洋医学と違い、症例から積み上げた東洋医学の考え方に近いものがある」と指摘。足裏の反射区療法などは自分で手軽にできることが魅力だが「すべての病気の改善に役立つわけではないので注意してほしい」と話している。




