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西日本新聞 医療・健康

特集記事

進歩する白血病治療 

[キーワード]がん循環器科血液内科

[更新日時]2006年10月15日

 ●特効薬で生存率が向上 移植法は高齢者も可能に

 血液のがんと呼ばれ、死に至る病のイメージが強い白血病。しかし、特効薬の開発など治療法の進歩がめざましく、成果を挙げているという。最新の治療法を国立病院機構九州がんセンター(福岡市南区)の鵜池直邦(ういけなおくに)・血液内科部長に聞いた。 (角谷宏光)

 白血病は造血幹細胞が骨髄(こつずい)中でがん化し、無制限に増殖し続ける病気だ。罹患(りかん)率は人口10万人当たり、男性が5.8人、女性が3.8人(2000年の統計)と決して高くはないが、その悲劇性ゆえに、よく名前が知られている。

 健康な人の場合、造血幹細胞は常に分化(成長)し、酸素を運ぶ赤血球と病原体と戦う白血球、血管に付着して出血を止める血小板を作り出している。白血病になると、造血幹細胞の分化が停止して白血病細胞に変わり、異常増殖を始める。その結果、正常な血球が減って貧血や出血、感染症にかかりやすくなる。さらに白血病細胞が骨髄から臓器へと広がって臓器機能障害を引き起こす=イラスト参照。

 一般的に白血病と呼ばれるのは①全体の40―50%を占める急性骨髄性白血病②同じく20―30%の急性リンパ性白血病③同15%の慢性骨髄性白血病④同10%以下の慢性リンパ性白血病―の4つに大別され、急性のものは治療しなければ数カ月以内に死に至る。慢性の場合は治療をしなくても数年間は生存するとされるが、慢性骨髄性白血病は3、4年後に9割以上の確率で「急性」に転化する恐れがあるという。

 ●ミニ移植に注目

 治療はまず抗がん剤を使った化学療法を行う。骨髄中にあふれる白血病細胞を100分の1から1000分の1以下に減らしてスペースをつくり、正常な造血ができるようにするのが狙いだ。白血病細胞が顕微鏡で見つからない状態になると、「寛解(かんかい)」とされる。「治癒」と呼ばないのは、白血病細胞が見えなくてもごく少数、潜んでいるからだ。

 寛解後は、白血病の種類や症状、再発のリスクなどを精査のうえ、化学療法の継続か、正常な造血幹細胞を植え付ける骨髄移植、出産直後に新生児から取る臍帯血(さいたいけつ)(へその緒の血液)移植などを試みる。

 移植の際は、10日ほど前から悪性細胞を根絶するための全身放射線照射や大量の抗がん薬投与が行われる。この前処置は患者の負担が大きいため55歳ぐらいまでが限度とされてきたが、最近、前処置の負担が軽いミニ移植が取り入れられ、70歳程度まで対象が拡大した。

 ●分子に的を絞り

 ただ、放射線照射などの前処置が必要な移植は、正常な臓器や組織へのダメージが避けられない。

 このため、発症のメカニズム(分子機構)が明らかになった一部の白血病では、その分子に的を絞った新しい療法が行われるようになった。最初に実用化されたのが、分子標的治療薬「全トランスレチノイン酸(ATRA)」による急性前骨髄球性白血病(急性骨髄性白血病の一種)の治療だ。従来の抗がん剤で5年生存率が32%だったものが71%に向上=グラフ㊤参照。また、慢性骨髄性白血病の治療に分子標的治療薬「イマニチブ」を使用すると骨髄移植をしなくても治癒できる可能性が生まれ、鵜池部長は「まさに特効薬」と説明する。

 また、九州における罹患率が本州の約20倍というウイルス性疾病の「成人T細胞白血病」の治療法も変わった。この白血病は40年ほどの潜伏期間があり、発症率は5―6%と低いものの、いったん発症すると抗がん剤を投与しても平均生存期間が1年以内というやっかいなものだった。

 代わって効果を上げているのが造血幹細胞の移植で、九州がんセンター血液内科のデータによると、5年生存率が50%程度に上がったという=グラフ㊦参照。

 白血病全体の治療成績は、分子標的治療薬の開発と移植療法の進化を中心に確実に向上している。鵜池部長は「白血病は治療法の進歩で、寛解から完全治癒へと治療目標が変わった。自分が医者になった30数年前からすれば隔世の感がある」と話している。


【写真】鵜池直邦部長