●光の屈折を調整

医学的に説明すると、近視は角膜や水晶体を通過した光が網膜に届く前に結像する状態。大島眼科病院(福岡市博多区)の松井裕康副院長は「写真に例えれば、フィルター(角膜)とレンズ(水晶体)を通過する際に屈折した光が、フィルムに届く手前でピントが合ってしまうため、ぼやけて見える現象と同じ」と説明する。
そこで近視のレーザー手術は、熱を発生しない特殊なレーザー(エキシマレーザー)を照射して角膜を削り、光の屈折具合を調整することで視力を矯正する。
もともと一定水準以上の裸眼視力が必要な運動選手やアレルギー体質でコンタクトレンズが使えない人などのため手術法が開発された。1990年代に欧米で普及し、国内では厚生労働省が2000年に認可。手術を受けたゴルフのタイガー・ウッズ選手が「カップがバケツのように大きく見える」と話したことで知られるようになった。

手術には、角膜表面の削り方の違いなどから複数の方法がある。現在は「レーシック」と呼ばれる手術が主流だ。
レーシック手術は、まず眼球を覆っている厚さ約500ミクロンの角膜の表面を、かみそり状の特殊装置で100-150ミクロンの厚さにめくり、角膜本体にレーザーを当て数ミクロン単位で削っていく。角膜のどの部分をどれくらい削るかは、コンピューターが制御する。
薄くめくった角膜表面はフラップと呼ばれ、レーザー照射後は角膜本体に張り付けるようにして元の状態に戻す。手術時間は片方の目で十分余りという。
角膜への負担と術後の痛みを最小限に抑えるため、特殊な薬剤を使って角膜表面を薄くめくる「ラーゼック」という手術もある。
●老眼は効果なし

日本眼科学会によるとレーシックの場合、視力は術後数時間から1日程度で改善。視力が安定するには1週間から1カ月程度かかるものの、90%以上の人が裸眼視力1.0以上に回復するとされている。
ただ、強度の近視の場合、効果が見込めないケースがあり、糖尿病や緑内障といった目の病気がある人も手術を受けられない。また、レーザー治療の合併症として、角膜を薄く削り過ぎると眼内圧力の影響で角膜が変形することや、細菌感染などが原因で角膜が濁り、視力低下を招く恐れなども指摘されている。
精度の高い手術装置が登場し、これまで失明などの深刻な合併症は報告されていないが、ある大学病院の眼科医は「どんなに技術が進歩した手術であっても、リスクはゼロではないことを頭に入れておいてほしい」と指摘する。
もう1つ手術を受ける前に考える必要があるのは、老眼とどう付き合うか。40代以降に症状が出始める老眼は加齢に伴い水晶体が硬くなり、その厚みを調節する毛様体の収縮力も衰えるのが原因。近視のメカニズムと異なるため、レーザー近視手術で同時に老眼を治すことはできない。
近視の症状が安定する十代後半からの手術を勧める医療機関が多く、レーザー手術の対象は主に20-30代という。また、手術には保険が適用されないため、片目につき10数万円から20数万円の費用がかかるのが一般的だ。
●専門医に相談を

02年に屈折矯正センターを開設、九州・山口の大学病院で初めて近視レーザー手術を始めた久留米大病院(福岡県久留米市)の山川良治教授は「職業や趣味、生活環境などを考え、医師によく相談して手術を受けてほしい」と助言する。
日本眼科学会の専門委員会がまとめた「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」(04年)も、医療機関側に対し患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の必要性を強調している。さらに専門の講習会を受講した眼科専門医が手術をすることを定めている。
近視レーザー手術に関するインターネットの情報の一部には、安全性に関する説明が不十分なケースも散見される。山川教授は「手術を受けようとする医療機関に眼科専門医はいるか、その医師が講習を受けているか、確認してほしい」と呼び掛けている。
【写真1 】松井裕康副院長
【写真2 】近視が起こる状況
【写真3 】レーシック手術の手順
【写真4 】山川良治教授




