
●福岡和白病院循環器科医長 野口博生氏
実は「突然死症候群」という病名はありません。突然死を引き起こす病気には幾つもあり、いわば総称です。突然死の6―7割は心臓疾患が占めます。
では死に直結する心臓疾患とは何かというと、大きくは(1)血を送る冠動脈が詰まったり、血流が少なくなったりして起こる心筋梗塞(こうそく)や狭心症(3割)(2)筋肉の異常である心筋症(3割)(3)拍動が不規則になる不整脈(2割)-があります。
この場合の不整脈の多くは「特発性心室細動」を指します。心室細動とは、心臓のポンプが速くなり過ぎて空打ち状態になったり、さらにはブルブル震えて収縮しなくなったりした状態です。特発性とは、遺伝性や家族性が認められず突然現れることを言います。しかも電気的な異常によるため、目で見て異常が分かる(1)(2)と異なり、死後に解剖しても判断できません。
つまり質問者が心配している突然死症候群は、特発性心室細動を指しているのだと思います。亡くなった石塚さんがどうだったのかは分かりません。ただ、彼はラガーマンだったので、いわゆる「スポーツ心臓」だったのかもしれません。長期間の運動で肥大した心臓は、心室細動を引き起こしやすいとされています。
特発性心室細動の一部は、30―40代の働き盛りの男性を就寝中や安静時に突然襲うことが多く、かつては「ぽっくり病」と呼ばれました。しかし1992年、ブルガダという研究者が、ある特殊な心電図を確認したことから「ブルガダ症候群」と呼ばれるようになりました。この症候群が疑われる心電図は、日本人の千人に1人が示すとされ、典型的なタイプに限ると1万人に1人程度です。
しかし日によって心電図が変化する人がおり、健康診断では見逃されることもあります。1年間に心室細動を起こすのは200人に1人。予防としては、自動体外式除細動器(AED)をぐっと小さくしたような植え込み型除細動器を手術で胸に入れるしかありません。突然死した家族がいる人や、原因不明の失神をしたことがある人などはリスクが高いと考え、夜間は1人にならないなど家族の協力も大切です。(のぐち・ひろお=福岡市東区)
【写真説明】福岡和白病院循環器科医長 野口博生氏
=2009/09/21付 西日本新聞朝刊=




