
●田川市立病院内科 藤本武士氏
ハム(HAM、HTLV-1関連脊髄(せきずい)症)は、成人T細胞白血病の原因ウイルスであるヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)によって起こる病気で、日本で発見されました。症状は歩行障害や排尿障害、便秘などです。
徐々に進行する歩行障害は、まず両下肢のつっぱり感のために足がもつれて歩きにくくなり、歩幅も狭くなって内またで歩くようになります。走ると転びやすく、階段では下りにくさを感じます。両下肢の筋力が低下すると、特に太ももや腰回りに力が入りにくくなり、つっぱり感も加わって、素早いスムーズな動きができなくなります。症状が進むと、つえや車いすが必要になります。早期から自覚される排尿障害や便秘は、尿意があってもなかなか出ない排尿困難、残尿感、頻尿、我慢できずに漏れてしまう尿失禁など。運動障害に比べはっきりと自覚している人は少ないようです。
治療としては、幾つかの薬剤が症状を軽減したり、進行を遅らせたりすることが報告されています。ステロイド剤は約7割の患者に何らかの効果がみられます。しかし、感染症の誘発、糖尿病の悪化、骨粗しょう症による大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折などが問題になります。
インターフェロン〓(アルファ)は唯一、有効性が確かめられ保険が適用される薬です。ウイルスを減少させ、免疫異常を改善する効果があります。ただ、うつ症状や肝障害、白血球減少などの副作用に注意が必要です。
一方、患者の長期追跡調査によると、約半数の人は10年たっても運動障害の進行がほとんどみられませんでした。そのような非活動期には、排尿障害に対する対症療法やリハビリテーションが推奨されます。
特にリハビリテーションは大切で、腰回りの筋力増加やアキレスけんの伸長により、歩行の改善が得られます。高齢での発症者に進行が早い傾向があり、重症例では両下肢の完全まひ、体の筋力低下による座位障害で寝たきりになる人もいますが、一方で運動障害が軽度のまま長期にわたり、症状の進行がほとんどみられない人も多くいます。
上肢の完全まひや発声の障害などが出る例はほとんどありません。ただ、歩行障害による転倒は大腿骨頸部骨折などで寝たきりになるきっかけになりますし、尿路感染の繰り返しや床擦れなどにも十分な注意が必要です。(ふじもと・たけし=福岡県田川市)
【写真説明】藤本武士氏 田川市立病院内科
=2009/05/10付 西日本新聞朝刊=




