西日本新聞

西日本新聞 医療・健康

コラム・聴診記(医療班から)

ホームレスは歯も問題

[更新日時]2010年09月06日

 前回、ホームレスの継続的な通院への公的支援制度が、福岡市などにない問題について書いた。今回加えたいのは公的支援がないことでホームレスが困っていることに、歯の問題もあるという点だ。虫歯の治療こそ継続通院が必要なのは言うまでもない。

 ここに1冊の報告書がある。タイトルは「FUKUOKA CITY ホームレス者 歯科相談報告 2007-2009現場からの声」。めくると、痛々しい口の写真3枚が目に飛び込んでくる。大半の歯が抜けた口、虫歯が並ぶ口-。いずれも福岡市のホームレスのものという。

 報告書は、歯科医師らでつくるNPO法人「ウェルビーイング」(同市)が5月に発行した。同法人は2006年から同市の教会などで、ホームレスら生活困窮者からの歯科相談にボランティアで応じており、その際、治療は原則しないものの、歯磨き指導なども実施している。同法人理事で、これまでに約200人の相談に応じた歯科医の西本美恵子さんは「ホームレスは歯の治療が受けられないため口の中は坂道を転がるように悪化する例が多い」という。

 ごきごきいたむ▽歯がないので空気がもれる▽奥歯をペンチで自分で抜いた▽歯が折れてセメダイン(接着剤)でつけてたが、またとれたので捨てた-。報告書には悲痛な声も多数掲載されている。

 同法人は、報告書に「ホームレス者が歯科医療を受けられ自立できるように社会へ働きかけていきます」との決意も明記。報告書は福岡市などには送付済みで、同法人のホームページでも見られるようにしている。

 福岡市などは、ホームレスが継続通院が必要な場合は、正式に生活保護を受けて住まいを定めてもらい、住居費や食費などと一緒に通院費も支給するやり方だ。だが前回も書いたように「できる限り人の世話になりたくない」と正式に生活保護を受けるのを嫌うホームレスは少なくない。

 全国を調べてみると、「生活保護から、継続通院の医療費だけを単独支給することもしている。住まいはいらないが、病院にはかかりたいという人を放っておくわけにはいかない」(名古屋市)と、ホームレスの通院を公的に支えている自治体もあった。
 (編集委員・西山忠宏)

=2010/09/06付 西日本新聞朝刊=

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