西日本新聞

2007年06月04日

<1>新タイプ 博多風覆す極太豚骨

men01_01.jpg 北海道・札幌、福島県・喜多方と並んで日本三大ラーメンの一つに数えられる福岡・博多ラーメン。

「豚骨スープとそうめんのように細いめん」が特徴だが、最近、従来の概念を覆す新しいタイプの豚骨ラーメンが次々と誕生している。

 その中の一軒「島系本店」のラーメンはまさにユニーク。丼にこんもりと盛られた野菜は荒切りキャベツと太モヤシをゆでたもの。そしてその下には、まるでうどんのような極太の中華めんが、これまたドッカリと隠れているのだ。

 はしでむんずと極太めんをつかみ、ゆで野菜とよく混ぜ合わせ口へ運ぶ。にっちりと抗うめんのコシと、シャキシャキと弾けるゆで野菜の食感がなんとも楽しい。

 そして厚さ一センチはあるチャーシューは、はしでほぐれるほど柔らかい。スープは豚骨のだしと背脂(せあぶら)と野菜の甘みが効いたしょうゆ味。これまさに未体験食感の豚骨ラーメンである。

men01_02.jpg 「細いより太い方がめん自体のおいしさが味わえるでしょう? うちのラーメンはめんを第一に考えているんです」と南原雅明店長(22)。小麦の風味を生かした幅七-八ミリ、厚さ四-五ミリの極太中華めんは、福岡で作ってくれる製めん業者が見つからず、関東から取り寄せる。

 極太めんに負けないようにとチャーシューも厚切りに。半日かけて取ったスープも、さらに小鍋で小一時間ほど煮詰め、うまさを凝縮してから使う。

 昨年十一月のオープンから半年。よりストレートに極太めんのおいしさを味わってもらおうと、スープの量を極力減らした新メニュー「島そば」も発売し、細めん至上主義の博多豚骨ラーメン界に新風を吹き込む。 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼島系本店 志免町別府。月曜定休(月曜が祝日の場合は翌火曜)。電話=092(935)5257。

2007年06月18日

<2>豊前裏打会 讃岐超す食感を追求

men02_01.jpg するすると口に収まり、もっちりと粘るコシ、ぷるんっと解けるヒキ。独特の食感がナンとも極楽な細めんの色白創作うどんと、扇子のように盛られた大ぶりのゴボウ天。北九州の「ご当地めん」となりつつある豊前裏打会(ぶぜんうらうちかい)のトレードマークである。

 「あの当時のお客さんは災難だったでしょうねぇ。だって、毎日味の違ううどんを出していたんですから」

 豊前裏打会の中心は「津田屋官兵衛」の店主、横山和弘さん(59)。二十四年前、義兄の誘いに乗って脱サラし、うどん屋を始めた。週末ごとに讃岐(香川県)へ出掛け、うどんを食べ歩き、店主の話を聞き、仕事ぶりを見学。七年後、すべて独学で学んだうどん作りが一段落し、店に客がつき始めたとき、知人に紹介された大分市の創作うどん屋で衝撃を受けた。

 「うまい…。なんだ?まるでもちのようなこの食感は」。未体験の食感を超える個性あふれるめんを作りたい。新たな挑戦が始まった。

men02_02.jpg まずは、うどんの原料である小麦粉の研究。うま味成分であるでんぷんとコシを決めるグルテンの質と比率が味の要。さらに、生地を練る塩水の濃度や、できた生地の熟成温度と時間。さまざまな粉をブレンドし、試作に明け暮れること一年。ようやく大分市の店を超えるうどんが完成した。

 それから十年、個性的なうどんは着々とファンを増やした。津田屋官兵衛で修業、独立した九店舗と「豊前裏打会」を結成。豊前・北九州発のうどん食文化作りを目指す。

 「裏」には「表」の本流である讃岐うどんに対抗する気持ちを込めた。国内産小麦を使った色黒のうどんや、中華めんのような食感を意識した極細うどんなど、さらなる個性派うどんの開発にも余念がない。横山さんのめん作りに「完了」の二文字はないようだ。

 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/
   ◇   ◇

 ▼津田屋官兵衛 北九州市小倉南区津田新町。写真は「ごぼうおろしぶっかけ」(六百七十円)。電話=093(475)7543。定休は日曜と第一月曜。

2007年06月25日

<3>発祥の地 久留米で挑む脱豚骨

men03_01.jpg 豚骨ラーメン発祥の地といえば久留米。白く濁ったスープに中太のストレートめん、そして黒いのりのトッピングが主流である。そんな「豚骨帝国」に昨年五月、しょうゆ専門店「ラーメンGAKU」が登場した。

 「ラーメン作り? 独学なんです。オヤジと二人三脚で作り上げたんですよ」。若き店主、鹿毛学さん(26)のラーメンは丁寧な盛りつけの「美人めん」。端正に切りそろえられた白髪ネギに見ほれつつ、黄金色のスープをすする。骨太な豚骨に加え、かつお節やあじ節、ホタテなど魚介だしの味わいが軽やか。

 それもそのはず。スープは和食一筋四十年の料理人である父のアドバイスを受け、六年がかりで完成させた。スープの個性に合わせて細めの「卵縮れめん」を使用。直前にチャーシューをあぶり、揚げネギを添えるのは、より奥深い風味を演出するためだ。

men03_02.jpg その久留米市で八年前に開業した「麺菜酒家 かつらや」も、あえて豚骨ラーメンを置かない名店。

 塩、しょうゆ、みその三種類にこだわる。

 「そりゃ、周りから止められましたよ。豚骨を置かなきゃ久留米じゃやっていけないって」と振り返る店主の桂屋章治さん(39)。心配する友人にはこう力説した。「コンビニのカップめん売り場には、塩やしょうゆなどいろんなラーメンを売っているじゃないか。豚骨以外の需要がきっとあるはずだ」と。

 香り高く仕上げるために、パックに詰めた魚介だしを鶏がらスープに入れる。めんもしょうゆ、塩、みそそれぞれの味わいに合わせた三種類を使い分ける。

 豚骨帝国で「脱豚骨」に挑む二人の心意気は、滋味あふれるそのスープのように熱い。 (升谷知夫
・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼らーめんGAKU 久留米市日吉町。「らーめん」(五百円)。電話=0942(35)7472。日曜定休。

 ▼麺菜酒家 かつらや 同市国分町。「醤油らーめん」(六百円)。電話=0942(51)8611。火曜定休。

2007年07月02日

<4>交流拠点 多彩さが筑豊の魅力

men04_01.jpg 県中心部に位置する筑豊地域。江戸時代は長崎街道の宿場町として、近代は石炭の産地として、さまざまな人や物資が行き交った交流拠点は、ラーメン文化も実に多彩。地元の店ではいろんなタイプの味が楽しめる。

 「竜園」(飯塚市)の一番人気は横浜市のご当地めん「サンマーメン」だ。太モヤシやキクラゲ、豚肉、イカなどの具をいため、かたくり粉のあんでとじて、しょうゆ味のラーメンに載せる。トロンと柔らかなあんとパリッと弾けるモヤシの食感のコントラストがなんとも楽しい。

 店主の佐々木治義さん(57)は同市生まれ。二十二歳から十六年間、兄と二人で中華料理店を営んだ。三十八歳のとき義父を亡くし、独りになった義母の面倒をみようと飯塚へ移った。

 九州といえば豚骨ラーメン。いろんな店を食べ歩いて作り方を研究。豚骨、しょうゆ、塩、みその四種類を出す店を開いた。「ところが、いざ店を開けると、豚骨よりしょうゆの方がよく出たんですよ。

 横浜で培った自分の味が飯塚の人々に認められた気がしてうれしかったですねぇ」

 JR飯塚駅前に出した店が大繁盛、九年前に現在の場所へ移転した。肉と野菜入りのこってりラーメン「肉ソバ」や、甘みそしょうゆ味のピリ辛めん「辣辣麺(ラーラーメン)」など、さまざまななめん料理を提供する。

men04_02.jpg 「ポンポン亭本店」(嘉麻市)は豚骨、和風、塩、しょうゆ、みそ、カレーと七種類ものラーメンを提供。店主の大脇良隆さん(58)が、二種類のみそを一時間練り合わせて作るみそラーメンはコクのあるうま味と、さっぱり後味が人気だ。

 人の行き交うところに多彩な食文化が根付く。バラエティー豊かな味に出会える筑豊ラーメン巡りはいかが。 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼ラーメンと餃子の店 竜園 飯塚市若菜。火曜と第三月曜が定休。

 ▼ポンポン亭本店 嘉麻市岩崎。電話=0948(43)1579。月曜定休。

2007年07月09日

<5>地位向上 丁寧なうどん目指し

0709_01.jpg うどん-。それは、博多発祥のジャパニーズ・ファストフード。「唄(うた)う!手打ちうどん 稲穂」なるユニークな屋号の店を構える岡崎健一郎さん(34)は、うどんの地位向上を志している。

 「同じめんなのに、そばやラーメンに比べて、うどんってあまりにも軽く思われている気がするんです」

 古くから大陸文化の玄関口として栄えてきた福岡市。博多区の承天寺には「うどん発祥の地」の碑が残る。ゆで置きの柔らかいうどんを手早く温め直し、温かいかけ汁でささっと食べる。その手軽さが、博多うどん流の魅力ではある。が、岡崎さんは、丁寧なうどん作りにこだわる。

 学校卒業後、しばらく居酒屋で働いた。「手に職を持ちたい」と、26歳のとき一念発起。香川県内の讃岐うどん店で修行した。福岡へ戻って会社勤めで開店資金をためながら、独学でうどん作りを研究してきた。

0709_02.jpg めん作りはすべての工程が手作業だ。使う粉は北海道産。手作業で生地を練ることで水分を多めに保ち、生地のモチモチ感を出す。温度管理にも細心の注意を払う。「帯打ち」という手法でうどんを延ばし、やはり手作業で切りそろえる。
 
 だしも個性的である。一般的な昆布やかつお節だけでなく、中華料理の食材として知られる干し貝柱を使っている。
 
 「具うどんもいいですが、かけうどんを大切にしたいんです。うどん作りの良しあしがストレートに味に出るメニューですから」。そのめんは、唇をこするつやっぽい触感が特徴。にっちりとしたコシとヒキ。鼻へと抜ける小麦粉の風味がほんのり香る。
 
 博多うどんでも、讃岐うどんでもない独自のうどんを作りたい。さらなる味わいを目指して、岡崎さんの精進は続く。 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間500杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/) 

   ◇   ◇

▼唄う!手打ちうどん 稲穂 福岡市早良区野芥3丁目。電話=092(873)0086。定休は木曜と最終週の水曜。写真は「ひやかけうどん」(450円)

2007年07月16日

<6>豚骨主義 繊細な味にこだわり

0716_01.jpg 豚骨ラーメンは「常食性」が高いというか、いわゆる「ハマる」めん料理だと思う。ふと食べたくなると、いても立ってもいられなくなる。
 
 遠賀町の「南京ラーメン黒門」店主、川内久門さん(49)も見事にハマった1人。建築資材会社の営業マンだったころ、北九州市の老舗豚骨店「黒木」の味にほれ込んだ。 2年半、会社が休みの土曜日に早朝から店に通い、見よう見まねでスープの仕込みを学んだ。跡取りがいない黒木の味を「絶やしたくない」と、5年前に脱サラして黒門を開業した。
 
 メニューはラーメン、大ラーメン、おにぎりの三種。あくまで豚骨にこだわる主義だ。「豚骨って大味な印象もあるでしょう? 実は、サッパリとしたダシが出る繊細な食材。材料の質や炊くときのちょっとした火加減で日々味が違うんです」。作り手になって実感した奥深さである。
 
0716_02.jpg あるとき、師匠とラーメンを作り比べた。同じスープを使っても全く味が違う。なぜか? スープを丼に注ぐ際、釜のどの部分からどのくらいの量をすくうかで味が決まるからだ…。
 
 「豚骨のあまりの奥深さに、ある種の恐ろしささえ感じました」。今は亡き師匠の味を超えたいと、川内さんは今日もスープ釜に向かう。
 
 福岡でラーメンといえば、イコール「豚骨」といっても過言ではない。そんな豚骨派にとっての一大事が先月あった。
 
 博多豚骨の象徴的な存在「元祖長浜屋」(福岡市中央区)が突然休業。正月のほか24時間営業の店がなぜ? 自ら店を訪ね「独自取材」したファンたちによる休業理由の憶測がインターネット上を飛び交い、廃業説も浮上。ネットの掲示板では、店の存続を願う署名活動まで始まった。
 
 結局、無事に営業再開したものの、一連の騒動は尋常でなかった。それほど人々は豚骨ラーメンを愛してやまない。(升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間500杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/
 
   ◇   ◇
   
▼南京ラーメン黒門 遠賀町島門。写真は「ラーメン」(500円)。電話=093(293)1314。定休は月曜と第3日曜。

2007年08月20日

<7>辛味競演 夏こそタンタンメン

0820_01.jpg 暑くなると恋しくなるのが、冷たいものと辛いもの。辛いめんの代表格といえばタンタンメンだろう。福岡市中央区の天神周辺では、ここ数年専門店が相次いでオープンしている。

 中央区薬院に二年前にオープンした「博多担々麺(めん)まるみや」では、しょうゆ味にみそ味、豚骨味と三種類のタンタンメンが楽しめる。

 自慢の「博多担々麺」は豚骨味。普通のタンタンメンは鶏がらのスープを使うが、あえて豚骨のスープを使い、力強い味わいの個性的な味に仕上げた。具も一工夫。定番の肉みそに加え、いためたモヤシとニラも添えた創作タイプである。

 「博多といえば豚骨ラーメンでしょう? 博多らしい『ご当地タンタンメン』を目指してます」と鍋藤智仁さん(27)。

0820_02.jpg 六月オープンしたばかりの「福博軒」のタンタンメンは、なんと「汁なし」。丼の中にスープは入っていない。中太の縮れめんをゴマだれ、ラー油、具の肉みそをあえて食べる。実はこれが、正統派だとか。

 「もともと中国の四川省で食べられていたタンタンメンは『汁なし』だったそうです。さおで担いで行商しても汁気がないからこぼれない。『担げるめん』だから『担々麺』という名がついたと聞いています」と七種和孝さん(30)。

 「汁なし」でも深いうま味と辛み。中国産の花山椒(はなざんしょう)と黒ゴマ、白ゴマをいったオリジナルスパイスを添える。具に冷たいトマトを乗せた「汁なしトマト担々麺」が店のイチオシメニューだ。

 それぞれに個性を競うタンタンメンの数々。今年の夏は、刺激的な各店の味を食べ比べ、暑気払いしてみてはいかがだろう?

 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼博多担々麺まるみや 福岡市中央区薬院二丁目。092(716)9388。定休日曜。
 ▼福博軒 福岡市中央区今泉二丁目。092(406)0173。年中無休。

2007年08月27日

<8>活況前夜 本格そば相次ぎ登場

0827_01.jpg 全国に知られる豚骨ラーメン、中世以来の歴史を誇る博多のうどんに比べ、いささか影が薄かったのが「そば」の存在。ところがここ数年、福岡市の都心周辺で相次いでそば専門店がオープン。活況前夜の雰囲気が漂っている。

 同市中央区長浜で三年前に開店した「生粉蕎麦(きこそば) 玄(げん)」は、値段が一番高い「海老(えび)天蕎麦」「天ざる」でも四百九十円。そば粉比率一〇〇%の手打ちそばが格安で楽しめるとあって、平日の昼時は行列ができる。

 暑いこの時期によく出る「冷やかけ」は、昨年から始めた夏限定のメニュー。かつおだしが利いた冷たいかけ汁と、コシのある冷たいそばの取り合わせが涼しげな一品だ。

 同店の永井正一さん(41)は「うちはリピーターのお客さんが多いので、飽きられないように新しいメニュー作りに努めてます」と話す。

0827_02.jpg 同市中央区渡辺通の「手打ちそば 両国」では三種類の手打ちそばが楽しめる。中でも名物は、「黒打太切」。五ミリ角はあろうかといううどんのように太いそばは、かみ応えも十分。店主の河野茂さん(59)は「そばの実のうまさをストレートに味わってほしくて考えたメニューです」と語る。

 河野さんはその道三十年のそば職人。勤め帰りにそば屋に立ち寄り、軽く酒を楽しみ、そばをすする-。そんな関東のそば食文化を福岡にも広めたいと願っている。

 九州のそばといえば、熊本県南小国町から阿蘇市につながる国道沿いの「そば街道」などが知られる。福岡市・天神周辺が、新たな「そばどころ」に加わる日も近いかもしれない。

 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼生粉蕎麦 玄 福岡市中央区長浜一丁目。電話=092(714)0355。無休。
 ▼手打ちそば 両国 福岡市中央区渡辺通五丁目。電話=092(713)6821。定休月曜(祝日は問い合わせ)。

2007年10月18日

<9>鉄都の味 チャンポンも個性的

01.jpg 北九州市戸畑区の市場や食堂で古くから親しまれているチャンポンは、キャベツにモヤシにかまぼこにイカと、一見なんの変哲もない。が、具の下に隠れた「めん」が特徴的。チャンポンといえば太めんが相場だが、具の底から姿を現すめんはかなり細い。

 「普通のチャンポンめんはゆでるのですが、うちのめんは蒸すんです。作り方が全く違うんですよ」と語るのは、田中製麺(めん)所の三代目店主、田中龍さん(42)。一九四〇年ごろ、取引のあった中華料理店の中華まんの蒸籠(せいろ)蒸しをヒントに初代が考案したという製法を、今も忠実に守る。

 めんのコシを決めるグルテン。通常のめん作りには、グルテンが多く含まれる強力粉や中力粉が使われるが、この蒸しめんにはグルテンの少ない薄力粉を使う。練り上げた生めんを木製の蒸籠に並べ、蒸気で十分ほど蒸した後、風を当てて一気に乾燥させる。生地の練り具合と蒸し加減の兼ね合いでめんの味と食感が決まるという。

02.jpg 戸畑チャンポンの老舗の一軒、福龍で食べてみた。なるほど。太いゆでめんのチャンポンとは明らかに食感が違う。細い蒸しめんはシュルシュルと小気味よく口に収まり、さらに強いコシともちもち感を併せ持つ。戦後の高度成長期、工場で働く人たちがこの味を求め列をなしたという。

 四大工業地帯の一つとして栄えた北九州の「ご当地めん」は、戸畑の蒸しめんチャンポンだけにとどまらない。乾めんを使った焼きうどんや、角切りの大きな肉を具に乗せた「どぎどぎうどん」など、どれも強烈なインパクトを放つ。

 庶民派グルメのパラダイス、と呼ばせていただきたい。
 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間五百杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇

 ▼田中製麺所 北九州市戸畑区牧山一丁目。写真(下)は「蒸し麺」(十食入り六百円)。電話=093(871)2187。
 ▼福龍 北九州市戸畑区中原西一丁目。写真(上)は「チャンポン」(六百三十円)。電話=093(871)7091。日曜定休。

2007年11月05日

<10完>関東の味 つけめん勢力じわり

1105_01.jpg 「つけめん」を出すラーメン店が、福岡でもここ数年増えている。

 つけめんは、関東風と広島風に大きく二分類できる。冷たいめんを、ピリ辛の冷たいつけ汁で食べるのが広島風なら、魚介風味の温かいつけ汁で食べるのが関東風だ。

 福岡では関東風が、じわり勢力を広げている。関東風の元祖は、3月に半世紀の歴史に幕を閉じた東京・池袋の「大勝軒」とされる。当初は店員のまかない料理だったとか。客に請われて出したら、評判が口コミで広がり、連日行列の繁盛店に。今や首都圏では一般的なメニューとなった。

 福岡の店も独自の創意工夫を凝らす。2年前、つけめんをメニューに加えた「まるげん」は、福岡でのブームの火付け役だ。「ラーメンより、つけめんの方がよく出る日も多々あります」と、店主の鈴木克学さん(38)。

 めんは、名古屋名物きしめんのように平たい特注だ。ほのかに甘酸っぱいつけ汁と、薄切りチャーシューをほお張る。にっちりとした平めんのこしと、魚介のうま味、豚肉の甘味が口中へ広がる。めんに添えられているスダチを絞れば、ナンとも軽やかな味わいに変身するのも面白い。

1105_02.jpg 「博多新風」の店主、高田直樹さん(35)も「創作性こそ魅力ですから、毎年新しいレシピで出してます」と、つけめんへのこだわりを語る。

 うどんのように太いめんは、干しエビの粉末を練り込んだ自家製。つけ汁はラーメンスープに、さらに大量の豚骨を加え煮出した濃厚味だ。角切りチャーシューもゴロゴロ入っていて、力強い味わいがハマリ系。

 また1つ新顔が加わった福岡の「めん文化」。ラーメン、うどん、そば、パスタ。さて明日は何にしようか。悩むなぁ。=おわり

 (升谷知夫・株式会社バフ映像プロデューサー 年間500杯のめんを食べ、その感想をブログで公開中。アドレス=http://heno.biz/blog/

   ◇   ◇
 ▼博多中華そばまるげん 福岡市中央区平尾2丁目。電話=092(522)8848。定休月曜。
 ▼博多新風 同市南区高宮1丁目。電話=092(524)2426。定休火曜。