西日本新聞

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2007年05月01日

豚骨「聖地」 家族愛が詰まった味[ニュース]

写真 麺食い記者が行く<1>豚骨「聖地」 家族愛が詰まった味

 シャキッとしたメンマの歯応えに縮れ麺(めん)のもちもち感が混ざり合う。あっさり風味の豚骨スープをすすると、舌の記憶が完全によみがえった。久留米市中心部の屋台「南京千両」。刻んだチャーシューもそのまま。十年前と変わらぬ味がそこにあった。
 新聞記者になり、初任地が久留米だった。豚骨ラーメン発祥の地。数多くの店を食べ歩いたが、一九三七年創業の南京千両は、豚骨の「聖地」。のれんをくぐるときにはちょっとした緊張感を味わった。豚骨ラーメンの歴史は、この店から始まったのだ。
 「半端じゃない常連さんがいますからね。『昔の方がうまかった』とか言われるとかなりへこみますよ」。三代目の宮本宝委(たかとも)さん(32)は苦笑いを浮かべる。七十年近く通う九十代のおじいちゃんもいるという。宝委さんは小学生のころから、祖母のソノさん(96)と母親のチエコさん(67)が切り盛りする店を手伝っていた。大学卒業後は、福岡市で花店の店員をしていたが、七年前に家業を継いだ。
 メニューはラーメンと卵。最近は、豚骨スープで炊いたごはん「とんこつ飯」を加えたが「ご飯ものがあることにびっくりする人もいて…。常連さんには革命だねって言われます」。写真 
 豚骨ラーメンは九州内外に広まり、模索と進化を続けるが「ラーメンの味を変えないことが誇り。自分なんかが変えていいはずがないし、怒られますよ」。豚骨ラーメンでは珍しい縮れ麺は兄の博さん(40)が製麺する。創業七十年の伝統の味。それは、ラーメン一家が紡ぐ家族愛にあふれた一杯なのだ。 (地域報道センター・高野靖之)
   ◇   ◇
 ▼南京千両 久留米市東町の明治通り沿い、熊本ファミリー銀行前で午後7時から翌朝4時まで営業。ラーメン500円。0942(37)7279。
    ×      ×
 食の宝庫、福岡県は多様な「麺文化」が花開いた場所でもある。ラーメン、そうめん、うどんなど定番からちょっと変わったユニーク麺まで。麺食い記者が「一杯」を求めて県内各地を訪ねた。

2007年04月30日本紙掲載

ソース色 皿に盛ったラーメン

写真 麺食い記者が行く<2>ソース色 皿に盛ったラーメン

 「最近話題になっとる焼きラーメンって知っとうや? この近くに焼きラーメン発祥の屋台があるげなばい」
 同僚記者の何げないひと言に、麺(めん)食い記者の心が動かされた。早速、突撃取材の開始だ。
 若者でにぎわう九州最大の繁華街・福岡市中央区天神。「親富孝(おやふこう)通り」向かい側にある屋台「小金ちゃん」を訪れると、店に入りきれない客が行列をつくるほどの盛況ぶり。期待が高まる。
 待つことしばし。皿に盛られて出てきたのはソース色のラーメン。スープはない。「もんじゃ焼きみたいですね」と同行した後輩のS記者。長めにゆでた麺、タマネギ、モヤシ、ニンジン、肉といった具を鉄板でいため、豚骨スープとソースをからめる。焼きそばのようで、ラーメンのような不思議な味が、麺にうるさい記者たちをうならせたのだった。
 「夏にラーメンのスープを飲むのは暑かろう。麺で何かおいしいもんができんかと、常連さんと一緒に考えて作ったんよ」。一九六六年からここで屋台を構える小金丸進さん(74)は、焼きラーメンを考案した開店当初を振り返った。写真 
 この焼きラーメン。当初は「裏メニュー」的存在だったが、雑誌やテレビに取り上げられ、徐々に名物メニューに成長。二〇〇六年に永谷園が即席ラーメンとして商品化し、全国に知れ渡った。「話を聞き付けて全国からお客さんが来るよ。うれしいこっちゃね」。小金丸さんは笑った。
 全国的にも名高い福岡の豚骨ラーメンと屋台の文化。その両者が融合した焼きラーメンは、初めて食べたのになぜか懐かしい味だった。 (地域報道センター・野村創)
   ◇   ◇
 ▼小金ちゃん 福岡市中央区天神2丁目、天神三井ビル裏。木・日曜定休。焼きラーメン650円。090(3072)4304。
2007年05月01日本紙掲載

2007年05月02日

天まど 焼きうどんの上に卵

麺食い記者が行く<3>天まど 焼きうどんの上に卵
写真 
 繁華街にありながら、どこか懐かしい雰囲気が漂う鳥町食道街の一画にその店はある。焼きうどん発祥の店として知られる「だるま堂」。平日の午後三時すぎ。昼飯時を過ぎているにもかかわらず、店内の席はすべて埋まっていた。
 満席と言っても、店内はL字型に配置されたカウンター席わずか八つ。その中央では半世紀近く鉄板に向かっている二代目店主の坂田チヨノさん(70)がいた。八十センチほどの高さにある鉄板に合わせるように腰を曲げ、寡黙で頑固そうな感じ。麺食い記者も声をかけるタイミングに困る。とりあえず取材は後回しにして、名物の「天まど」を注文した。
 「天まど」は、もう一つのメニュー「焼きうどん」の真ん中に卵を割って入れた逸品。天窓越しに見える月をイメージしたものだという。乾めんを使うのが特徴で、モヤシなど水気の多い野菜は入れない。やがてチャッチャッという鉄板をヘラがこする小気味よい音が響き、秘伝のソースが焦げるいいにおいが立ち込める。待つこと数分。皿にこんもり盛られた麺を半熟卵につけて口に運ぶ。一般的なソース味と比べると、あっさりしたたまり醤油のような風味。よく焼いた麺に卵が絡み、モチっとした食感がくせになる。小倉の予備校に通い、何度となく足を運んだ十年前と味は全く変わっていなかった。
 焼きうどんは今や一流ホテルやコンビニにも並ぶ小倉名物だ。だるま堂も一躍有名店になった。それでも坂田さんは謙虚に笑う。「今でもお客さんに出すときは緊張するんよ」
(地域報道センター・首藤厚之) 写真 
   ◇   ◇   
 ▼だるま堂 北九州市小倉北区魚町1丁目、鳥町食道街内。木曜定休。天まど510円。093(531)6401。
2007年05月02日本紙掲載

2007年05月07日

偶然誕生 ラーメンが具を挟む

写真 麺食い記者が行く<4>偶然誕生 ラーメンが具を挟む

「世界初! バーガースタイルラーメン」-
 行橋市の大型複合商業施設「コスタ行橋」の駐車場に、麺(めん)食い記者の食欲と好奇心をくすぐるのぼりがはためいていた。
 そばにはボディーを真っ赤に塗った販売車。売っているのは、パンの代わりにラーメンの麺で具を挟んだハンバーガー。めんバーガーだ。
 まずは注文。いったんゆでて冷凍した麺に、回転焼きの鉄板で再び熱を加える。ネギチャーシューと目玉焼きなどの具を挟み、たれをつけてできあがり。こんがり焼けた麺と、豚の角煮のように軟らかいチャーシューの甘みが口の中に広がる。スープはないが、味はラーメンそのものだった。
 めんバーガーは偶然の産物だ。東京でラーメン店を経営する定石光治さん(47)=行橋市=が昨年初め、従業員がゆで損なって冷蔵庫に隠し、丸く固くなっていた麺を発見。「ハンバーガーのパン生地に似ている」とひらめき、知人の幡手幹久さん(41)=苅田町=に開発を提案した。
 麺に豚骨スープをからめ、形が崩れないように工夫する。だれの口にも合う秘伝のたれを開発する-。大阪でラーメンの屋台を引いたことがある幡手さんが試行錯誤の末に商品化し、昨年八月に開店。物珍しさも手伝って人気を呼び、今ではすっかり「行橋の名物」として認知された。写真 
 まだ販売車だけの営業だが、「店を増やし、全国に広めたい」と二人。ファストフードとして定着したライスバーガーのように、めんバーガーも「手に取って食べられる手軽なラーメン」として市民権を得る時代がやってくるかもしれない。 (地域報道センター・野村創)
   ◇   ◇
 ▼めんバーガー 行橋市西泉の「コスタ行橋」駐車場で販売。350円。具はネギチャーシューと鶏つくねの二種類。水曜定休。080(5604)7870。

2007年05月03日本紙掲載

2007年05月10日

中世博多 小麦肌の健康うどん

写真 麺食い記者が行く<5>中世博多 小麦肌の健康うどん

 透き通るような柔肌が好き。「腰(コシ)が物足りない」との陰口など、言わせておけばいい…。といっても、恋の話じゃないです。今回のテーマは「博多うどん」。
 香川県の讃岐うどんが全国的なブームになっている。コシが強いその麺は、例えるなら筋骨隆々のマッチョ系。だが、麺食い記者は、昔ながらの「博多うどん」の女性的な優しさも好み。ダシをたっぷり吸い込んだふわりとした食感は、二日酔いの疲れた胃腸をいつも癒やしてくれるから。
 福岡市博多区竹下の製麺所。土屋輝男社長の二男・伸之さん(32)は、小麦粉や塩水をこねた「ダゴ」を両足で何度も何度も踏み込んでいた。うどんのコシとなるグルテンを引き出すため欠かせない作業だ。
 ここでは、小麦粉の製粉過程で生じる胚芽やフスマを混ぜ込んだ「中世博多うどん」を作っている。大陸から製粉技術が伝わった当時の博多は、うどん、そば発祥の地とされる。「かつての味を想像しながら再現してみたとです」と輝男さん(72)。市麺類商工協同組合の前理事長として、博多うどんPRのため開発した逸品でもある。写真 
 敷地内の直営店「春月庵」ののれんをくぐり、「ごぼ天うどん」を注文した。目の前に届いた直径三十センチの特大どんぶりに、まずびっくり。割りばしで麺を持ち上げてみる。胚芽などを練り込んだ麺は褐色に近い。色白もいいけれど、小麦色の素肌も魅惑的だ。
 ズルズルズル…。小麦特有の香りとモチモチの食感。食物繊維が豊富で健康的な“美人うどん”が好きになった。 (地域報道センター・池田郷)
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 ▼中世博多うどん 春月庵 福岡市博多区竹下1丁目、「平和フーズ工業」の敷地内。ごぼ天うどん600円。うどん3玉まで1玉と同料金のサービスも。092(431)1428。
2007年05月04日本紙掲載

2007年05月14日

吉井素麺 「みずみずしさ」の謎

写真 麺食い記者が行く<6>吉井素麺 「みずみずしさ」の謎

 はしで持ち上げた麺(めん)の重みが違う。しばらくそのままでいると、指先がぷるぷる震えるほどだ。ほんのりした甘みが口の中に広がり、何よりもみずみずしい。見た目は普通のそうめんだが、一口すするたびに疑問がふくらむ。吉井素麺(そうめん)。この重さ、そしてジューシーさはなに?

 創業二百年という「長尾製麺」。老舗が提供するそうめんやうどんを気軽に楽しめるのが、同じ敷地内にある「うどん屋 井戸」。七代目の長尾洋介さん(44)に案内してもらった製めん所。黙々と作業する女性の姿に、吉井素麺の謎を解く鍵があった。
 丹念にかつ素早く均一に麺を延ばしていく。その長さは二メートルほど。文字通りの手延べだ。ただ、必需品とも言える油は一切使わない。長尾さんによると、長尾製麺のそうめんづくりは、一般的とされる二日間よりも一日多い三日間。江戸時代から続く工程を踏襲し、小麦粉をじっくり熟成させる。油を使わないため作業中の麺の乾きは気になるが、そこは加湿器で作業場のしっくいを湿らせ麺を乾かせない念の入れようだ。 写真 
 吉井素麺の「重さ」と「みずみずしさ」。これは、めんの表面を油が覆わないため水分の吸収が早いことが理由だった。ただ、ゆで上がりは早めに食べるに限る。吸収がよく、ゆっくり味わっていては、麺が伸びてふやけてしまう。

 うきは市吉井町は、旧浮羽郡吉井町。同町を含む旧浮羽郡には、県内の乾めん業者の三分の二が集中する。良質の小麦と水が支える県内有数の麺どころ。吉井素麺を一口すすると、その土地の実力がよく分かる。
 (地域報道センター・高野靖之)
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 ▼うどん屋 井戸 うきは市吉井町927。火曜定休。そうめん600円。0943(75)3155。
2007年05月05日本紙掲載

2007年05月18日

アジア風 強烈個性、和と融合

写真 麺食い記者が行く<7完>アジア風 強烈個性、和と融合

 「インドはなぁ、一度行ったら癖になるぞ」。赤いスープをすするといつも、学生時代の友人の口癖を思い出す。インドや中国、インドネシアなど、アジア各地から取り寄せた二十種類の香辛料が刺激的な「Nanaチャンポン」。その魅力は、突然、無性に食べたくなる「中毒性」とでも表現しようか。
 アジア各地の麺料理を看板にしている店が、福岡市中央区にある。その名は「アジア麺’sプラザNana(ナーナ)」。アジア各国を訪ね歩いてきた高野裕介店長(41)によると「ナーナとは、タイの言葉で『いろんなものが集まる』とか『交わる』という意味だそうです」。
 なるほど。メニューを見ると、各国のいろんな麺料理を集めている。「中華焼きそば」、米粉から作る麺料理「ベトナムフォー」、トマトとセロリを具にしたしょうゆ味の「プノンペンラーメン」など八種類…。どれにしようか悩んだ末に「やっぱり、いつものNanaチャンポン」が、麺食い記者のパターンだ。写真 
 異国の香り立つ刺激的なスープには、どこか懐かしい風味も溶け合う。厨房で中華鍋を振る田中和人さん(46)は「隠し味は日本のしょうゆ」と打ち明ける。どのメニューも強烈な個性を持つだけに、日本人好みにアレンジされている。
 中世・博多-。大陸から製粉技術が持ち込まれ、うどん、そばに代表される麺文化は、この地を経て全国で花開いた。アジアの交流拠点は、今なお各地の食文化を吸収しながら、新たな進化を続けている。(地域報道センター・池田郷)
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 ▼アジア麺’sプラザNana 福岡市中央区今泉1の11の7。Nanaチャンポン800円(ランチ680円)。092(737)6200。

ASIA麺’s PLAZA Nana
福岡市中央区今泉1−11−7−2F(地図)
営業時間11:30~24:00/定休日 日曜
ランチセット800円/092(737)6200

2007年05月06日本紙掲載