─漂着した無人島。若い男23人と1人の女という奇妙な共同生活を描いた映画「東京島」で、唯一の女性・清子を演じています。桐野夏生さんの原作に比べ、ユーモラスな雰囲気が強い娯楽作に仕上がっていますが、映画ならではの魅力はどこにありますか?
木村 原作は女性の心理状況を丁寧に描いていますが、映画は女性の行動力や直感力を中心に描いています。人間がふだん使っていない潜在能力を具現化したものが清子であり、自分の中にそんな力があるかもしれないという希望を体感できる映画です。女性なら、エルメスのカレ(スカーフ)が帽子やバッグになるファッションも楽しめます。
─島で男の中に女1人、非日常の究極ですね。
木村 台本を読んだ段階では立体化できなくて、準備も計算も全く出来なかった。現場で体感したことがすべてでした。実際に島に行ってみると、自然も共演者になってくる。自分が孤独を感じてくると、虫に話し掛けたり(笑)。そういう感覚がお芝居になっていきました。
─鹿児島県沖永良部島と徳之島で40日以上のロケだったそうですね。
木村 情報がないことの幸せもあるんだなと思いました。自分に何が必要か不必要か、モノに囲まれすぎていると考えられないですよね。それが自分の中で明確になっていく時間でした。朝日と夕日が毎日すごいんですよ。島の人に話すと「それがふつうだから分からない」って。東京にはない世界だから、泣きそうになりながら写真撮ってました。沖永良部では近くの雑貨店のおばちゃんと島バナナを食べながら、つむぎの織り方を習ったりしました。人がすごく温かい島でした。
─これだけ出演作が相次ぐと「私は女優に向いてたんだな」と思うでしょう?
木村 いままで、向いているなんて思ったことがないんです(笑)。でも、これ以外に何が出来るかっていわれると、やっぱり出来ない気がするので、表現することが好きなんだなとは思います。
─舞台出身の強みってありますか?
木村 どうだろう…、舞台では結構コメディーとか、めちゃめちゃにはじけてさらけだしてたんですよ。でもテレビに移行して、いつも美しくいなきゃいけないって、女優としての定義を植え付けられていったんです。それを壊すのは怖いと思う半面、崩した経験もあるんだからやってもいいじゃない、て押す自分もいる。舞台をやっていなければ、そうは考えられなかったかもしれません。
─多江さん主演のはちゃめちゃなコメディー、見たいです。
木村 いつも幸薄い役が多すぎて(笑)。もっとコメディーができるといいなと思ってます。
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木村多江(きむら・たえ)さんは1971年、東京生まれ。舞台女優として活動後、97年に映画デビュー。テレビドラマ「リング」「救命病棟24時」や映画に数多く出演。初主演映画「ぐるりのこと」では多くの映画賞を獲得した。今年4月には初のエッセー集「かかと」(講談社)も。
=2010/08/29付 西日本新聞朝刊=