─公開中の映画「サヨナライツカ」は、バンコクを舞台に、美穂さん演じる神秘的で自由奔放なヒロイン沓子(とうこ)が、25年前に出会った豊(西島秀俊)を愛し続ける情熱的なラブストーリーです。物語のどこに魅力を感じ、どう演じましたか?
中山 一人の男性を最後まで愛し続けた強い気持ちを美しいと感じ、それは映画や小説だからこそ描けることでもあるから、演じてみたかった。監督とは沓子の生い立ち、好きな花や色など細かいプロフィルを決めて、せりふが少ないので自分の心の声を用意して挑みました。ミステリアスな役をそのまま演じるのはつまらないから、本番中のリアルな感情をうまく生かしたつもりです。楽なシーンはひとつもなかったけれど、共演者やスタッフに支えてもらいました。
─神秘的な沓子の心情を映すような、多彩な衣装に目を奪われました。あれほど多くの衣装を着るのは楽しかったでしょう。
中山 はい、楽しかったですね。衣装によって、自然にそのシーンの気持ちに切り替わることができました。
─船の上での衣装が一番好きでしたが…。
中山 ああ、私も同じです。あのシーンは豊の婚約者と対面する、女性同士の戦いのシーンだけど、戦うぞっていう衣装じゃない。その微妙な感じがよく計算されていたなと思います。
─人生の岐路における究極の選択、が映画のテーマでした。美穂さんは何を信じ、どんな風に岐路を進んできましたか?
中山 まず最初に無になるっていうか…。自分をゼロに戻す。そして直感を信じる、感じですね。考えたらきりがないし、どっちにも行けなくなってしまうかもしれない。だからなるべく、一番フラットな状態に戻してあげる、ことですかね。
─自分の選択を後悔することは…。
中山 絶対、絶対、意地でもしない!(笑)
─40代が始まります。これからの自画像は?
中山 新しい人や作品と出会うと、新しいことを覚えたり、常に新しい自分を発見できる。とにかくいろんなものを吸収しながら、少しずつ転がっていきたいですね。
─美しさや生き方、多くの女性にとって美穂さんはあこがれの存在ですね。
中山 多分それはメディアで出てる部分だと思うので…。たいしたことないです(笑)。
─結婚後、パリに移住し、お子さんも生まれました。自分自身の何が一番変わった?
中山 強さ。
─強さ?
中山 はい。もともとすごく強いとは思うんですけど、ほんとに強くなった。何があっても大丈夫と思える。それはたぶん、家族がいるから、だと思います。
中山美穂(なかやま・みほ)さんは1970年3月1日生まれ。85年のデビュー以来、歌手・女優としてテレビ、映画、CMで活躍。映画「サヨナライツカ」の原作は、夫で作家の辻仁成さんの同名小説。監督は「私の頭の中の消しゴム」のイ・ジェハン監督。結婚を機に2002年からパリへ移住。04年に男の子を出産した。
=2010/01/24付 西日本新聞朝刊=