西日本新聞

箱の底には希望が残っている 映画監督 ジェームズ・キャメロンさん(55)

2011年01月10日 18:43
─最新作「アバター」は神秘の星・パンドラにやってきた人類と、星の先住民ナヴィとの戦いやロマンスを描いたSFアドベンチャー大作。最先端の3D(立体)映像の美しさと迫力は未体験の世界でした。

キャメロン(JC) これまでの3Dは画面から飛び出して観客を驚かすものばかり。そのスタイルを変えたかった。観客のための窓をつくり、その窓の向こうに別のリアリティーがあるという世界を提示したかった。映画館にいることも3D眼鏡をかけていることも忘れ、あたかもパンドラに行ったような気持ちになる。それはこの映画で初めて成し遂げたことなんだ。

─映画には神秘的な植物や動物が次々に登場します。翼竜の姿を見て、私はコナン・ドイルの冒険小説「ロストワールド」を思い出しました。幼いころに見たり読んだりして、影響を受けた作品はありますか?

JC キップリングやハガード、1940―60年代のSFは片っ端から読んだよ。映画でいえばレイ・ハリーハウゼンの「SF巨大生物の島」だね。あのころ読んだもの、見たものすべてがあって、アバターという夢のプロジェクトを実現できたのです。

─アバターの物語は壮大な叙事詩であり、同時に戦争を繰り返し、環境破壊を続けてきた文明への批判も強く込められていますね。

JC この映画はまず別世界への冒険の叙事詩であり、その冒険には良心がある。いま、自然界を人間が破壊しているね。どこの国の人間かではなく、人類としてアクションを起こす時期に来ている。私は映画監督として、観客に対して知的に訴えるのではなく心に訴えて、何かしなければという気持ちを呼び起こしたいんだ。教えたり説諭したりするのではなく、既に知っていることを、あらためて心に突きつけているのです。

─惑星をパンドラと名づけた理由は?

JC パンドラはギリシャ神話に登場する最初の女性。間違ってあけた箱から災害が飛び出し、最後に残ったのが希望だった。いま、人間は罪悪を世界にまき散らしている。でも人間は頭が良いし、窮地を乗り越える力をもっている。箱の底には希望が残っている。人間を信じたいんだ。

─3Dの先、例えばにおいや熱を観客が感じるような新たな映像も考えていますか?

JC においは好みがあるから難しいね。ひとつあるのは映像をもっとリアルにすること。いまの映画は1秒間に24コマだけど、48や60コマにすればもっとクリアーでリアルになるし、アバターどころじゃない映像体験ができる。7年間かけて3Dカメラを開発したけれど、それはモノに過ぎない。問題はどんなスタイルを、どんな哲学をつくるか。まだまだやりたいことはたくさんあるよ。

 ジェームズ・キャメロンさんは1954年生まれ、カナダ出身。「ターミネーター」(84)のヒットで注目を集める。「エイリアン2」「ターミネーター2」に続き、「タイタニック」(97)は映画史上1位の興行記録を樹立。二重被爆の映画化を構想しており、来日時に二重被爆者で4日に亡くなった山口彊(つとむ)さんを訪ねた。


=2010/01/10付 西日本新聞朝刊=


 


 


 


 

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