─映画「笑う警官」は全編、演技以上の緊張感がにじみ出ていたように感じました。
大森 僕らは角川映画を見てきた世代なので。角川春樹監督の目で、芝居を見られているという緊張感があった。もちろん芝居で出してもいるんですけど、単純に緊張しました(笑)。なにしろ全シーンワンカット、長まわしで撮っているので。
─角川監督の演出法で驚いたことは?
大森 最初に「せりふをゆっくり言ってくれ」と言われて。最初はどういう効果が生まれるのか分からなかった。やっていくうちに少しずつ(演じた主役の)佐伯宏一というキャラクターや、監督の映画のリズムがつかめた。監督が狙っているのはこういう空気感だったのかなって感じました。
─大森さん本来のリズム感とは違った。
大森 そうですね。そのはずされ方が、僕じゃない、佐伯宏一になる瞬間だったりするので、面白い体験でしたね。
─出演依頼があった時に佐々木譲さんの原作は読んでいましたか?
大森 原作は読んでいなかったんですけど、話をいただく数カ月前に北海道警の汚職事件を題材にしたノンフィクションの本を人に薦められて読んでいて。実際に起きたことなんだと、すごく興味深いと感じていたところだった。その道警の汚職をテーマにした映画でオファーがくるとは思っていなかったし、何か妙な運命みたいなものを感じました。
─劇中の登場人物はそれぞれ信じる正義をよりどころに行動します。俳優・大森南朋にとってのよりどころは何ですか?
大森 映画や、映画の現場が好きで。現場で20代を過ごして、いろんな大人に会って、いろんなことを教えてもらった。映画の現場に帰ってくるとほっとする。現場がよりどころになっているのかもしれません。
─映画の現場には短編作品「リハビリ刑事」を撮るなど、監督としても携わっている。
大森 あぁ、隠れた名作(笑)。九州まで知れていましたか。あれで何がしたかったかというと、一度自分は出ないで、カメラの裏側から俳優さんの芝居の風景を見たり、現場にいたかった。
─共演者は同年代の俳優が多い。
大森 松雪泰子さんも(雨上がり決死隊の)宮迫博之さんもそうですね。和気あいあいとした現場でした。特に昔から知り合いの(同僚刑事役の)野村祐人と共演できてうれしかったですね。祐人に役作りで相談したり、話し合いながら進めていけて、助けられました。
─原作の小説は続編が出ていますが、映画の続編もあり得る?
大森 もちろん呼んでもらえたらやりたいな。次は松雪さんが主演、僕は3番手で。そういうのもいいですよね。
大森南朋(おおもり・なお)さんは1972年、東京生まれ。93年に映画「サザンウィンズ日本編 トウキョウゲーム」でデビュー。主演映画「笑う警官」は佐々木譲氏の同名小説が原作。北海道警の汚職事件を基に、警察組織の腐敗を描いた。角川春樹氏が12年ぶりに監督を務めた。
=2009/11/15付 西日本新聞朝刊=