江戸時代に起きた「虹の松原一揆」題材 昭和初期の無声映画再び 福岡市 市総合図書館が復元へ
2010年07月10日 20:03
●3月3、6日に上映
江戸時代に唐津藩(現在の唐津市)で起きた「虹の松原一揆」を題材に、昭和初期に自主制作された無声映画(35ミリ)の復元作業が、福岡市早良区の市総合図書館で進められている。フィルムは寸断された後に順不同で接合されており、失われた部分もある。総合図書館は可能な限り復元して、3月3、6日に同館併設の映像ホール・シネラで上映する。
映画は1933年ごろ、唐津市の安養寺住職、善乗運さん(故人)の発案で製作された。主人公は、寺内の首塚地蔵に祭られている大庄屋の冨田才治。1771年の虹の松原一揆を主導して、処刑された人物だ。現住職の善達司さん(83)によると、京都から撮影スタッフ、北九州市から劇団を招き、虹の松原などを舞台に3日間の日程で撮影を行った。エキストラで地元住民も多数参加したという。
上映に際して当時の内務省の検閲を受けた結果、「権力への抵抗は不適切」としてタイトルが「虹の松原百姓一揆」から「義民・冨田才治」と変更され、数シーンがカットされた。達司さんは「本来は30分ほどあったのでは」と語る。
映画は完成後、地元の公民館や野外で何度か上映された。だが、無声映画の上映は弁士や楽団を雇う必要があるため、経済的事情で困難になり、戦後はフィルムを切断してスライドで何度か上映されたという。その後、1本のフィルムにまとめられたが、クライマックスシーンが冒頭にあるなど順序はバラバラで、散逸したシーンもある。
3年前、虹の松原の保全活動などに取り組む市民団体「虹の松原 七不思議の会」(代表世話人・田中明佐賀大教授)が寺に保管されていたフィルムを掘りおこし、福岡市総合図書館の映像資料課に保存を依頼。その後、安養寺がフィルムを寄贈して、本格的な復元作業がスタートした。
フィルムの保存状態は悪くないが、脚本が残っていないため、物語の前後が分からない部分も多い。復元・上映されるのは約15分の「不完全版」となる。
同課の八尋義幸・主任学芸主事は「(京都を拠点に活躍し、榎本健一らともかかわった俳優・監督の)中根龍太郎が監督した可能性もあり、裏付けが取れれば、映画史においても新発見となる。上映によって、上映当時に見た経験がある人の証言など、新たな材料が見つかればいい」と期待している。上映に関する問い合わせはシネラ=092(852)0608。
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●史料としても貴重
▼東京国立近代美術館フィルムセンター・板倉史明研究員の話 1920年代ごろから、寺院などが信者に向けて作った自主制作映画の存在が知られているが、現存しているものは数えるほどしかなく、映画史料としても貴重な存在。検閲時の資料など、新たな材料が見つかればよりはっきりと映画の全体像が分かるだろう。
=2010/01/11付 西日本新聞朝刊=