西日本新聞

フローズン・リバー (米国、2008年) 凍った河を渡るかどうか

2011年03月07日 18:05
 カナダと国境を接し、モホーク族の保留地を抱えるニューヨーク州最北部の町。映画は凍(い)てついた河のショットで幕を開ける。1ドルショップで働きながら、ふたりの息子を育てるレイ(メリッサ・レオ)は途方に暮れている。家を買うための金を、ギャンブル狂の夫に持ち逃げされてしまったのだ。レイは夫の行きつけのビンゴハウスへと車を走らせる。案の定、夫の車はそこにあるのだが、レイの目の前でその車に乗っていってしまうのは、ライラ(ミスティ・アップハム)というインディアンの女。

 こういうシチュエーションにつきものの悶着(もんちゃく)のあと、ライラはレイに車を売る気はないかと持ちかける。金に困っているレイ。けっきょくふたりは車を売るために、凍った河を渡ってカナダ側のモホーク保留地へ入る。が、車を買ってくれるはずの男のところで待っていたのは、アメリカへ密入国しようとする不法移民たちだった。モホーク族は国境に関係なく保留地内を移動できる。不法移民を運ぶのは、その法律を逆手にとったライラのアルバイトだったのだ。こうしてレイはなしくずしに密入国の片棒を担ぐことになるのだが…。

 凍った河がなんとも静かで、象徴的だった。それは、ある瞬間には大切なものを守るために支払わなくてはならない代価で、またある瞬間には最後のたのみの綱でもある。そして、こうした映画に約束されているクライマックスの破滅のあとで、凍った河は白人のレイとモホークのライラという、ふつうならばけっして交わることのない人生をつなぐ懸け橋にもなる。

 人と人のあいだには深くて暗い河が流れている。だけど、その河は凍りつくことがある。骨身も凍るような厳しい寒さ、つまり試練や困難にさらされたあとに。そのとき、凍った河を渡るかどうかは俺たち次第なのだ。やみくもに渡れば薄氷を踏んで一巻の終わり。でも、運がよければ向こう岸からこっちに歩いてくる人に触れることができるかもしれない。それがこの作品のメッセージ。(作家、福岡県在住)


▼「フローズン・リバー」公式サイト
http://www.astaire.co.jp/frozenriver/


=2010/03/07付 西日本新聞朝刊=

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