
(C)2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
知らない時代、場所なのに、なぜか懐かしい。このアニメのぬくもりはそんな不思議な既視感にある。芥川賞作家・高樹のぶ子が、自ら
の幼少時代をモデルに描いた自伝的小説をアニメ化したものだ。タイトルには魔法とあるが、人気アニメにありがちな派手な魔法や不思議
な生き物は登場しない。その代わりに活躍するのは、元気一杯のヒロイン・新子の豊かな想像力だ。
昭和30年。豊かな自然が広がる山口県防府市に住む小学生・新子は、毎日を楽しく過ごしていた。空想好きの彼女はおじいさんから聞かされた、千年前にこの地にあった都「国衙」について想いをはせている。平安時代のお姫様や当時の人々の暮らしは、おでこにマイマイ(つむじ)を持つ新子の頭の中で、いきいきと蘇った。そんなある日、東京から、おとなしい少女・貴伊子が転校してくる。仲良くなった2人は、同級生のシゲルやタツヨシら、遊び仲間と金魚を飼ったりして過ごすが、やがてある事件が起き、みんなの絆が揺らぎ始める。
何よりも絵柄のあたたかさがいい。光を効果的に取り入れた風景描写も魅力的だ。昭和30年代の子供の暮らしは、現代のそれからみると、信じられないくらいのんびりしたものだ。これこそファンタジーの世界と言いたいくらいだが、そんな彼らの世界にも、死や別れといった、厳しい現実は存在している。だが新子とその仲間たちは決して逃げない。マイマイによる空想力は決して現実逃避のためではなく、懸命に生きるためのアンテナだ。「明日も遊ぼうや」。何でもないこの言葉が伝えるときめきを、このあたたかい物語から思い出してほしい。
(映画ライター・渡まち子)
監督:片渕須直
声の出演:福田麻由子、水沢奈子、本上まなみ ほか
配給:松竹
ユナイテッド・シネマキャナルシティ13、TOHOシネマズトリアス久山などで11月21日公開
▽公式サイト
http://mai-mai.jp/