西日本新聞

Vol.335「マイマイ新子と千年の魔法」

2010年05月12日 11:16
(C)2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
(C)2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
 知らない時代、場所なのに、なぜか懐かしい。このアニメのぬくもりはそんな不思議な既視感にある。芥川賞作家・高樹のぶ子が、自ら
の幼少時代をモデルに描いた自伝的小説をアニメ化したものだ。タイトルには魔法とあるが、人気アニメにありがちな派手な魔法や不思議
な生き物は登場しない。その代わりに活躍するのは、元気一杯のヒロイン・新子の豊かな想像力だ。

 昭和30年。豊かな自然が広がる山口県防府市に住む小学生・新子は、毎日を楽しく過ごしていた。空想好きの彼女はおじいさんから聞かされた、千年前にこの地にあった都「国衙」について想いをはせている。平安時代のお姫様や当時の人々の暮らしは、おでこにマイマイ(つむじ)を持つ新子の頭の中で、いきいきと蘇った。そんなある日、東京から、おとなしい少女・貴伊子が転校してくる。仲良くなった2人は、同級生のシゲルやタツヨシら、遊び仲間と金魚を飼ったりして過ごすが、やがてある事件が起き、みんなの絆が揺らぎ始める。

 何よりも絵柄のあたたかさがいい。光を効果的に取り入れた風景描写も魅力的だ。昭和30年代の子供の暮らしは、現代のそれからみると、信じられないくらいのんびりしたものだ。これこそファンタジーの世界と言いたいくらいだが、そんな彼らの世界にも、死や別れといった、厳しい現実は存在している。だが新子とその仲間たちは決して逃げない。マイマイによる空想力は決して現実逃避のためではなく、懸命に生きるためのアンテナだ。「明日も遊ぼうや」。何でもないこの言葉が伝えるときめきを、このあたたかい物語から思い出してほしい。

(映画ライター・渡まち子)

監督:片渕須直
声の出演:福田麻由子、水沢奈子、本上まなみ ほか

配給:松竹
ユナイテッド・シネマキャナルシティ13、TOHOシネマズトリアス久山などで11月21日公開

▽公式サイト
http://mai-mai.jp/
[PROFILE]
渡まち子(わたりまちこ)
映画ライター。西日本新聞の紙面で映画コラム「シネマの鍵貸します」を連載中。実は大の欧州サッカー好きでもある。
著者が運営する映画情報サイト 「映画通信シネマッシモ」はこちらから

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