西日本新聞

動物ニュース

2010年09月18日掲載 熊本 / 哺乳類

イルカは「海の級友」 天草市の通信制・勇志国際高 飼育の「カイ」 生徒の心の傷 癒やす

 天草市御所浦町の離島・牧島に、イルカを飼育する学校がある。通信制高校「勇志国際高校」(野田将晴校長)。校舎近くの海に12メートル四方のいけすを設けて1頭のイルカを飼い、定期的に島を訪れる生徒と触れ合う空間をつくる。家庭内トラブルやいじめによる不登校など、さまざまな事情で入学してきた生徒の心の傷を癒やす「海の級友」として、愛される存在になっている。

 
 同校は2005年、合併前の旧御所浦町が政府から教育特区の認可を受けたのを契機に、廃校になった小学校の校舎を整備して開校した。
 
 学校側によると、生徒の多くは不登校の経験者。イルカは彼らの心の癒やしにと、06年2月、和歌山県太地町の「くじらの博物館」から有償で提供を受けた。
 
 名前は「カイ」。雄のバンドウイルカで、体長約2・7メートル、体重約260キロ。普段は自宅でリポートを作成しながら学んでいる生徒たちが年1回、4泊5日の日程で行われるスクーリング(面接授業)で島を訪れ、触れ合う。一緒に泳いだり、餌をあげたりとクラスメートの感覚だ。
 
 他人とのコミュニケーションに障害があり、中には自傷行為に及ぶまで心に傷を負った生徒たちが、カイの前では笑顔を見せる。ある男子生徒は入学時、感情が全く表に出ず、教職員との会話も成り立たなかった。小学校低学年でいじめを受けて不登校になり、進学した高校は1日も登校せず退学。それがある夏、カイと泳ぐと満面の笑みを浮かべ、教職員や友人とコミュニケーションを取るようになった。現在は就職し、自立したという。
 
 「イルカ介在療法」-。イルカと触れ合い、癒やしの効果を心の病などの改善に生かそうとする動物介在療法の一種。野田校長は、国内でも研究が進むこの療法の要素が、カイと過ごす空間にもある、と感じている。
 
 13日からのスクーリングでは生徒数人がカイと泳ぎ、体を小刻みに揺らす喜びの表現や、潮吹きを間近に見た。
 
 「眠そうにしたり、喜んだり、魚と遊んだり。人間と一緒だなあって。前の学校は勉強ばっかりだったけど、ここに来てよかった」
 
 ある女子生徒(17)が笑顔で言った。
 
 野田校長は「不登校の子は心にバリアーを作り、その中に閉じこもっている。心を開くきっかけは、何かそばに感情移入できるものを与えてやること。子どもにとって、それがカイなのかもしれない」と語る。 
 
=2010/09/18付 西日本新聞朝刊=